2025年5月29日木曜日

至福のとき

  皆さんは何をしているときに一番幸せを感じますか? 趣味に没頭しているとき、気の置けない友人とおしゃべりしているとき、家族や恋人と過ごしているとき…。私は子どもと一緒にいるときと、料理をしているときです。

 特に夕方、ワインを飲みながら料理をするのが大好きです。娘も「お料理をしているときママはとっても幸せそう」と言いますし、夫も私がワインを飲みながら料理をしている様子を携帯のカメラで写しにきたことが何度もありますので、よほど私は機嫌良く料理をしているのだと思います。

 ワインを飲みながら料理をするのが幸せだという話を、先日ランチを食べに行った元同僚にしました。私より10歳下の後輩なのですが、彼が「分かりますよ、至福のときですよね」と共感してくれました。

 彼も料理好きで、夕ご飯のほとんどを奥さんではなく、彼が作るそうなのです。「至福のとき」という言葉を久しぶりに聞き、20年以上前のことを思い出しました。

 私が双子を妊娠していたときのことです。がん治療を終えての初めての、それも男女の双子の妊娠。私は「至福のときというのは、こういうことを言うのだなぁ」と幸せをかみしめていました。そして、その心境をつづった手紙を会社の先輩に書きました。

 その後、男の子を死産しました。言霊というのは本当で、今、人生を振り返ってもあのときが「至福のとき」で、あの後、その感覚を持つことはありませんでした。後に息子が生まれましたが、不安と心配を抱えた妊娠期間で、出産したときは幸せというより、安堵の気持ちのほうがずっと強かった。もちろん、今も十分幸せなのですが、「至福のとき」とは違う、悲しみも入り交じった静かな感覚です。

 同様の経験があります。私が新聞記者時代に厚生労働省を担当していたときのことです。記者として油が乗っていたときで、とてもやりがいを感じていました。そのとき、他社の先輩記者に「今が記者人生のハイライトだと思う」と言いました。その言葉通り、私はまもなく癌を発病し、退社することになります。まさにその通りになりました。

 それらの経験から、今は極端な表現はなるべくしないよう心がけています。自分が幸せに感じるときの表現は、幸せであることに感謝しているとか、しみじみとした幸せを感じるなど、穏やかなのが良いのかもしれませんね。

 

0 件のコメント: