2025年2月13日木曜日

20歳の献血

  先日、20歳の娘が初めて献血を試みました。条件が整わず、結果的に出来ませんでしたが、次につながる良い経験が出来たようです。

 朝、洗濯物をベランダで干していると、区から献血を呼びかけるアナウンスがありました。アナウンスはほとんどの場合、夏の「光化学スモッグにご注意ください」という注意報。「珍しいな。きっと血が足りないのかもしれない」と受け止めました。お役に立ちたいところですが、私はこれまで病気や出産でたくさん輸血をしていますので、出来ません。で、娘に聞いてみました。

「ねぇ、20歳になったから、献血してみない? ママはこれまで病気でたくさん輸血してもらったの。ママがこうして生きていられるのは、献血してくれた人たちの血液をもらえたお陰。ママはもうしたくても献血できないから、お願いできるかな?」

「いいんだけど。私、血を採られるのが怖くて」

「えっ? そうなの?」

「うん。去年大学で血液検査をしてもらったときは、恐ろしくて、涙が止まらなくて、看護師さんに側についていてもらったの」

「そうかぁ、じゃあ、無理かぁ」

「ううん、ママが側についていてくれるんだったら、献血してもいい。私も人の役に立ちたいし」

「じゃあ、早速行こう」

 娘は支度をしている最中から泣いています。玄関を出るときは、ティッシュで涙を何回もぬぐうくらいになっています。「やめようか?」と聞いても、「いや、行く」と言うので、泣きながら自転車をこぐ娘と一緒に献血会場に行きました。

 まずは、登録です。私はすぐ後ろについていましたが、娘はまだ泣いています。「帰る?」と改めて聞くと、「ううん、献血する。でも、怖くて」とまた、大粒の涙を流します。

 ようやく登録が終わり、血圧と脈拍数を測りましたが、なんと脈拍が100以上あり、次の手続きに進めません。看護師さんに促され、座って冷たいお茶を飲み、何とか脈が100以下に下がるまで待ちます。心のありようは、脈拍数にも出るのですね。

 やっと、100以下に下がり、さて献血というところで、看護師さんから、待ったがかかりました。

 看護師さんは娘の手を握り、優しく質問します。「献血が終わった後、体調が悪くなる人もいるんです。そうした場合、会場で少し休んでもらうのですが、大丈夫ですか?」

 娘は1時間後に歯医者さん、そして、その後にスーパーでのアルバイトが3時間入っていました。もう一人の看護師さんも側に来て、「献血をしていただくときは、次に予定がないときにしてもらったほうがいいです。今日献血してもらって、歯医者さんで体調が悪くなっても困りますし、もしかしたら、アルバイトも行けなくなるかもしれません。また、次の機会にお願いします」

 そうか、献血は体調が十分良く、かつ、献血の後に予定がないときでなければならないのですね。そうしたことに気が付かず、区のアナウンスにすぐ反応し、娘を巻き込んでしまった自分を反省しました。

 私はこれまで、ヘモグロビンが壊れる病気でヘモグロビンを、血小板が壊れる病気では血小板を、そして帝王切開でも輸血をしました。

 ヘモグロビンが壊れる病気だったときは、あっという間に体が動かなくなり呼吸が苦しくなります。そく輸血となるのですが、点滴を準備してもらっている間にも体調がだんだん悪化し、点滴から体に血が入った瞬間からどんどん呼吸が楽になっていきます。また、血小板が壊れる病気では、体のどこも打っていないのに内出血であちこちに赤紫色の斑点が出来ますので、これも緊急処置として血小板を輸血して内出血を止めるのです。最初の出産は緊急帝王切開でかなり出血し、これも輸血をしました。本当に私は沢山の方々のお陰でこのように生きているのです。献血をしてくださる方々に心から感謝をしていて、私もお役に立てるのなら、立ちたいのですが…。

 娘は私の勧めもあり、怖がりながらも献血を望んでいましたが、看護師さんの説得で今回は断念することになりました。会場の方々は献血が出来なかった娘や私にとても親切でした。そして、出来なかったけれども、娘の顔は晴れやかでした。「次は少し落ち着いて、泣かないで出来ると思う」

 帰りは娘に「ありがとう」の気持ちを込め、近くのカフェでケーキをご馳走しました。

 20歳の献血は今回は出来ませんでしたが、娘なら、きっとまた挑戦してくれると思います。そして、献血してくださっている方々、本当にありがとうございます。

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