2020年3月6日金曜日

臨時休校4日目 義母との電話、話題は新型コロナ

  新型コロナウイルス対策で全国の小中高校が一斉休校となった4日目の3月5日、自宅で仕事をして子どもを見てくれる予定だった夫が、「集中できない」という理由で出社することになりました。私も抱えている原稿があり、集中したいのですが、仕方がありません。「1日で5件の電話会議がある」とスマホの予定表を見せられては、諦めるしかありません。原稿書きは夜でも出来るのですから。

 前日、NHKのニュースで日本航空の職員の男性が在宅勤務に切り替え、小学校低学年の子どもの世話をするという報道を見たばかりでした。その方の奥さんが会社に出社しなければならないため、在宅での仕事が可能なその男性が家にいることになったというのです。今回は多くの親がやり繰りに苦心しているに違いありません。気持ちを切り替えて、家事と子どもたちの世話(主に息子の勉強を見ること)をしていると、夫からメールが来ました。

 「アーリングトンハイツでコロナ患者が3人出たらしい。ママに電話してくれないか?患者が出た病院にママが3週間前に入院していたんだ」

 アーリングトンハイツは、夫の両親が住むシカゴの郊外の街です。義母は3週間前に出血をして、その病院に数日間入院したのです。「離れて過ごしたのは何十年ぶり。改めてお互いの大切さを実感した」などという、胸がキュンとするような感想を義父から聞いたばかりでした。今度はコロナウイルス騒動です。きっと、不安に違いありません。

 何度か電話をして、ようやく義母につながりました。いたって元気でした。
「私が退院してから随分経つから大丈夫よ。でも、驚いたわ」と言います。「病院から連絡がありましたか?」と聞くと、「来ないわ。でも、何かあれば連絡が来るでしょう」と鷹揚に答えます。義母の心配は自分ではなく、孫にありました。「ゾーイ(夫の弟の娘)が4月にイタリアに行く予定なの。高校のオーケストラの活動で。イタリアは感染者が多いから心配。キャンセルになってくれれば良いけど」と言います。

 義母は続けます。「マスクを頼んだんだけど、時間がかかるみたい。ごめんなさいね」。先週、夫が「マスクがない」と義母に訴え、看護師をしている夫の一番下の弟(夫は4人兄弟の2番目です)に頼んでくれたみたいなのです。が、やはり、アメリカでも品薄で医療関係者でも手に入りにくくなっているのだそう。私は先日、家の整理整頓をしてマスクを5袋ほど発見したばかり。「この前、掃除をしていたら、引き出しの後ろに落ちていたのを見つけたんです。しばらくは大丈夫です」と言うと、義母はおおらかに笑ってくれました。10分ほどの電話の話題はコロナ。日本でもアメリカでも、このウイルスの正体がいま一つ分からず、国民が困惑しているのです。

 電話を終え、夫にメールをしました。
「ありがとう。僕も夜電話するよ」との返事。夫は本当にマメな人で、両親へは頻繁に電話をしたり、メールをしたりしています。大丈夫とはいえ、地球の反対側の両親のことが心配に違いありません。私の母は昨夏、札幌から東京に転居しました。我が家から自転車で数分の賃貸マンションに住んでいます。北海道はコロナウイルスの感染者が全国で一番多く、知事が「緊急事態宣言」を出しましたので、もし今も母が札幌にいたら、私も気が気でないに違いありません。改めて、母にこちらに来てもらって良かったと思いました。

 さて、子どもたちです。娘の1時間目は「宗教」、2時間目は「数学」。娘は勉強に集中しています。息子は「国語」と「生活」。国語は先生から「宿題は一気にやらないで、毎日少しずつやってください」と指示を受けているらしいので、ドリル1枚と漢字テスト1枚、それと公文をやらせました。公文教室もお休みで、親が宿題を取りに行っています。それでも時間が余ったので、「うんこ漢字ドリル」を数枚やらせました。これは子どもたちに大人気のドリルで、問題のすべての文章に「うんこ」が入っているので、楽しく勉強できるようなのです。たとえば、「体育の先生は、空中で回てんしながらうんこをして見せた」の場合は、回てんの「てん」を漢字にするという具合です。

 2時間目の「生活」は、「自分の部屋を片付けること」を指示しました。初めは言われて通りに散らかっていたおもちゃを片付けていたのですが、途中で「隠れ家づくり」に切り替えたらしく、布団カバーを使って部屋の一部を囲ってしまいました。こっそり、パソコンでアニメ映画を見るためらしいのです。娘から古いパソコンを譲ってもらってからは、勝手にグーグル検索をして、ちゃっかり映画を見つけてしまうので、本当に目が離せません。さらに、画用紙で、「隠れ家」に入るために必要な「IDカード」を家族分作って、そこに入る場合はそのIDカードを息子に見せなければならないというルールまで作ってしまいました。子どもはどんな状況でも、遊びを見出すのですね。面白いです。
 
「生活」の時間、最初は言われた通りにおもちゃを片付ける息子

しばらくたって部屋をのぞくと、「隠れ家」を作っていました
我が家は8年前、老人ホームに移った103歳のおばあさんがお手伝いさんと暮らしていた中古の家を買い、全面リフォームをした家です。購入前の10年間は私の体調が余りにも悪く、住んでいた賃貸マンションが悪いのかもしれないと引っ越しを決め、買った物件です。新築は高過ぎて買えないため、中古を購入。長生きしたおばあさんが住んでいた家だから、縁起が良い家に違いないと購入を決めました。当時は娘しかいませんでしたし、私は体調が悪い上に40代でしたので、予算内に収めるため、当然3人家族用の家を探しました。ですので、余分な部屋もなく、引っ越ししたその年に生まれた息子が小学生になったときに、苦肉の策として屋根裏を改築して部屋を造ったのです。今回、息子が作った「隠れ家」のコンセプトは、部屋の作りにぴったり合いました。

 3時間目は娘が「物理」、息子が「体育」。物理は先生がパソコンの画面に出ていて、生徒それぞれに質問をして、生徒が答えるという形で授業が進められています。時折のぞいてみると、生徒が真面目に授業に参加しており、感心するばかり。質問に答える娘の声も、普段家で出すような大声ではなく、蚊の鳴くような小さな声です。このような授業が自宅でも出来るなんて、インターネットは便利だな、と改めて思いました。

 息子が聞きます。
「ママ、体育どうしたらいい?」
「外で縄跳び。はやぶさ練習してね!」
はやぶさは、あや跳びと二重跳びが混じった高度な跳び方で、小学2年の息子が今一番熱中している跳び方なのです。息子は運動が大好きですので、嬉しそうに外に行きます。しばらくして、息子が戻ってきました。
「ママ、天気が良いから、ピクニックしようよ」
娘に聞くと、「行きたーい!」と賛成してくれましたので、気分転換にお昼は公園で食べることにしました。

 子どもたちが好きな納豆巻きを作り、冷凍食品の枝豆と一緒にお弁当箱に詰めて、前日作ったイチゴムースも小さな容器に入れ、お茶とテーブルクロスと一緒にバッグに詰めました。おかずを作るのは面倒なので、お惣菜が充実している近くのスーパーで買うことに。娘は「ハッシュドポテト」と「チキンナゲット」を選び、息子は「コロッケ」と「トリの唐揚げ」を選びました。それらを持って近所の公園へ。娘は早速ベンチに座ってパソコンを開け、勉強します。私は外での仕事用に携帯用のWiFiを使っているのですが、それが今回役立ちました。

公園に着くや否やパソコンを開いて勉強をする娘

ピクニックは家にあるものと市販の惣菜を組み合わせて
サッカーや野球ができるグラウンドがある公園は、小学生がたくさん遊んでいました。顔見知りの子も幾人かいました。臨時休校になってからは、いつもは頻繁に遊んでいる子どもや親から一切連絡がありません。臨時休校になる前にお母さんたちと話をする機会があったのですが、そのとき皆が異口同音に言っていたのは、「自分の子どもが感染源になることが一番恐ろしい」ということ。ですので、皆、お友達を誘うのを自粛しているのに違いありません。きっと、家にいることが飽きた子どもたちが遊びに来ているのでしょう。中には、マスクをした父親と息子がキャッチボールをしている姿も見られました。自宅で仕事をすることになったお父さんが子どもを連れ出しているのでしょう。私たちも食事の後は、鬼ごっこをして遊びました。息子が3人の影を、スマホで撮影。意外にも素敵な写真になりました。



 さて、その日の授業が終わった4時過ぎ、夫が帰宅しました。子どもたちをジョギングに連れ出してくれ、夕ご飯も作ってくれましたので、私は仕事をすることが出来ました。夜8時過ぎ、東京都足立区で10歳未満の小学生と保育園児、その母親の感染が確認されたというニュースが飛び込んできました。この3人は3月3日に検査で陽性の診断が出た祖母から感染したらしいのです。症状が出た後も4日間登園・登校したということ。小さな子どもを持つ親が最も心配している「自分の子どもが感染源になり、同級生に広めること」が現実になりつつあります。

 そのほか東京都では20代から90代までの5人の感染が確認され、この日確認された感染者は合わせて8人となりました。日本の感染者の合計はクルーズ船の乗員・乗客を含めて1056人。じわじわと感染が広がっています。
 

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