2023年12月7日木曜日

5分がゆ

  昨日から、食事が解禁になりました。五分がゆと柔らかく煮た野菜や魚・肉料理です。3日ぶりの食事はそれはおいしく、胃の痛みは少しありましたが、朝・昼・夕食と完食しました。

 国立がん研究センター中央病院の食事は美味しい。これは私がこれまで病室で話した患者さんの誰もが言っていることです。昨日の五分がゆと柔らかく煮たおかずも、絶妙の味付けで丁寧に作られていて、とても美味しかったです。胃が痛むので食べるときは休み休みですが、やはり、おいしい食事を食べられるのは本当にありがたいことです。

7日の昼食。おかずは柔らかく煮た白身魚とカリフラワー、青菜のお浸し、お味噌汁、パイナップル

 食事は相変わらずおいしいですが、今回の入院で13年前の前回の入院といくつか違った点がありました。まず、お見舞いが禁止されています。そして、病室では終日カーテンを閉め切るよう推奨されていることです。いずれも新型コロナウイルス感染対策が続いているためですが、私は入院するたびに大部屋の患者たちと食事中などおしゃべりをして、楽しかった記憶がありますので、今回は同室患者と話す機会がなくとても残念でした。

 以前でしたら、入院したときはまず、自己紹介代わりに病歴とこれからの治療について説明します。そして、皆でワイワイと治療情報を共有し合いました。この病院には状態が悪く他の病院から転院してきた患者や、通常の治療が効かずに治験を受けに来た患者が多いので、患者はそれぞれに不安を抱えています。それでなくても、がんに立ち向かうのは心が塞ぐもの。同じくがんを患う仲間との気軽なおしゃべりや情報交換が出来れば、随分心も軽くなるのにーと残念に思いました。

 それでも、同室患者の様子は医師や看護師との会話などから、少しは様子は分かります。私は4人部屋で、向かいにいるのは86歳のおばあちゃん。4日間絶食で、先生に「おなかすいた!」と訴えていました。私より1日前に五分がゆの食事が解禁となり、ずずっと元気な音を立てて食べています。私の母と同年代のおばあちゃんに親近感を覚えながら、早期回復を祈りました。

 斜め向かいの女性は、話し方と声の感じ、歩く様子から40代だと思います。治療薬の他、痛み止めや睡眠薬を処方してもらっており、調子が良くないようです。隣の女性はおそらく50代でしょう。私も飲み、副作用に苦しんだステロイド剤「プレドニン」を服用するようです。彼女の服用する量から、1か月後の顔のむくみが想像できました。急激に変わった自分の顔に、辛い思いをするのだろうなーと気の毒に思いました。

 私は今回は内視鏡手術だけですので、本当にラッキーだったと思います。自分が30代、40代にした治療はできるなら遠慮したい。悪性リンパ腫の3度目の再発だけは勘弁してほしいと思います。

 適度な運動とバランスの取れた食事には気をつけてきたつもりですので、これから気を付けるとしたら、ストレスや甘いもの、また、夕食時の1、2杯のワインでしょうか。でも、社会生活を営めば(私の場合、今の年齢で不必要な大学院生活)ストレスはありますし、甘いものが大好きなので、これをやめるのは本当に辛い。また、夕食時のワインは人生の楽しみですので、これもやめるのも残念。まぁ、これまでと同じ生活を続けることになりそうです。大学院については、少し、考え方を変える必要があるかもしれません。

 さて、今回、入院するにあたり、私が持ってきた本は2冊です。一つは「歎異抄」(梅原猛全訳注)。歎異抄は親鸞の弟子・唯円によって書かれた本です。自分が抱えていることへの答えを得たくて、様々な本を乱読し、精神腫瘍科医のカウンセリングも受けましたが、納得する答えが得られませんでした。で、仏教を学べば、求めている答えが得られるのではないかーと考え、「歎異抄」を選びました。

 歎異抄について書かれた本を以前読み、「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人おや」(善人ですら極楽浄土へ行くことができる、まして悪人は、極楽浄土へ行くのは当然ではないか」という言葉がずっと頭に残っていました。この本は、西田幾太郎や遠藤周作の思想に影響を与えたと言いますし、司馬遼太郎が「無人島に1冊本を持っていくとしたら『歎異抄』だ」と言ったともいいます。

 でも、やはりなかなか進みません。なぜか、入院したとき読みたくなるヘルマン・ヘッセの本も今回はなぜか、心に響きません。で、Kindleに入っている、作家で精神科医の帚木蓬生さんの「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」を再読しています。これは昨年、私が大学院の指導教員のアカデミックハラスメント(だと私は思っている)に悩んだときに読んだ本です。この本を読んで、解決策が見つからないこの状態を耐える力こそ今自分が蓄えるべきだーと考えることが出来ました。そして、じっと耐えていたら、思わぬところから解決策が提示されました。ですので、難しい局面に対峙するときは、この「ネガティブ・ケイパビリティ」を心構えとして持つようにしようと考えるようになりました。

 今回は早期発見・早期治療ができたとはいえ、1つ目のがんが2回再発し寛解状態にある状態での2つめのがん罹患です。これは、天からの警告かもしれないと受け止めています。自分の生活で何に問題があったかーを考えました。おそらく問題は昨年の大学院での辛い日々だったのではないかと考えています。私に能力があれば、もしくは気持ちの割り切りが出来きていれば、状況は違っていたかもしれません。今、状況は改善してきていますが、ままならないことも多い。ここは、ネガティブ・ケイパビリティの力で持ちこたえつつ、でも天からの警告は真摯に受け止めて無理はしないよう気をつけながら、努力していきたいと考えています。


7日の夕食。鶏肉の和風ハンバーグとじゃがいもの煮つけ、なすのお浸し、大根のお味噌汁、プリンも

0 件のコメント: