2025年6月11日水曜日

新聞記事を読んで…

  昨日(6月10日)、朝日新聞の朝刊に読み応えのある特集がありました。折々に論争になっているテーマを取り上げ、複数の識者の意見や対談を紹介する「耕論」という欄です。 

この日のテーマは「編み物のある人生」。最近編み物にはまる人が増えているため、編み物の力とは何かーを識者3人に語ってもらっています。その中の一人、「編むことは力」の著者のロレッタ・ナポリオーニさんの語りに共感しました。 

ナポリオーニさんは国際政治や経済のアナリストとして活躍していますが、2019年に長年一緒に暮らしていて信頼していた夫に裏切られ、すべての財産を引き出され、一文無しになったといいます。そして「個人がそんな事態に直面すると、私の知る経済学や政治学といった社会科学だけでは対応できませんでした。頼りにできたのは、6、7歳の時から祖母が教えてくれ、いつも身近にあった編み物だった」と語ります。ナポリオーニさんの祖母はイタリアで1900年に生まれ、不況や敗戦を経験しており、「祖母に比べれば、私の経験は何でもない。私はきっと乗り越えることができる、と確信が出来た」といいます。ナポリオーニさんは編み物についての本を書くことで、個人的な危機から立ち直ったのだそうです。 

なぜ、ナポリアーニさんに共感したかというと、私の人生の、幼少期から現在に至るまで積み重なってきた困難の重さ(私がそう感じる)は、頼りにしてきた自己啓発や精神医療、東洋哲学、仏教・禅などの本、そして、カウンセリングなどでは、もう対応できないという段階に来ているからです。このまま崖から落ちてしまうかもしれないーという気持ちを日々何かで紛らわせながら暮らしています。 

私をこちら側に押しとどめているのは、子どもたちの存在であり、オーストラリアの娘とのフェイスタイムでのおしゃべり、そして、息子に毎朝お弁当を作ること、夕方息子と夫に夕ご飯を作ることです。家族は私の作る料理が大好きで、いつも「美味しい」と言ってくれます。私にとって家族のための料理は、心の癒やしであり、支えなのです。 

信頼していた人に裏切られるのはどれほどの苦悩だろうーとナポリアーニさんの苦しみに思いを馳せます。でも、それに比べれば私の困難は軽いから頑張ろうーと思い直すことはありません。他者との比較はしたくないし、私の場合は、誰かに裏切られたのではなく、何度困難を乗り越えて立ち直っても、またそれにも勝る困難を被せてくる“人生”に疲れたからです。苦しみに立ち向かう頑張りも、それを乗り越えるための努力も、無駄だったのだと思い知ったからです。

それでも朝、起きます。自分を前に進ませる工夫をします。昨日は、ToDoリストに「morning mission(朝のミッション)」として、終わったタスクを書きました。こういうタスクのハードルは低いほど達成感があり、その積み重ねが自己肯定感を高めることにつながるといいます。

朝一番は、きちんとベッドメーキング。そして、息子のお弁当作り、朝食作り、洗濯物を干す、ゴミを捨てる、ペットボトルと瓶の分別(男子2人なので大量です)、キッチンの洗い物をする、シンク内とガスレンジを綺麗にする、トイレ掃除、浴室の掃除、バスルームの床ふき・洗面台の掃除などなど。リストは丁寧な字で書きます。そして、10個終わったら「Mission Complete(ミッション完了!)」と大きな字で書きます。

 このモーニング・ミッション20個終えて、自分の論文書きや他の研究者たち進めるプロジェクトの分担分に取り組みます。これも、「task」として細かく区切り、終わったものを記していきます。

これも思いつきで、明日続けているか分からない。でも、今日一日は良い始まりだったし、何とか一日を生きられる。こうして、思いつきでも何でもよいので、工夫をして、日々を何とか、崖の向こう側に落ちないように、自分で飛び込まないように、生きるのです。

  

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