2022年8月21日日曜日

ロンドンからの報告 ③

   ロンドン3日目の12日は列車で1時間ほどのところにある、大学都市オックスフォードに行きました。オックスフォードには夫の会社の上司が住んでいるのです。ケンブリッジの街と似ていて、歴史を感じさせる建造物がいくつもあり、知的な雰囲気が漂う街でした。

 ランチは隠れ家風のとても素敵なレストランで、夫の上司がご馳走してくれました。上司は香港に20年暮らして、民主化デモが始まる直前の2019年にイギリスに戻りました。現在は会社の事務所があるオックスフォードに居を構えています。写真を見せてもらいましたが、豪華な家で、3人の子どもが巣立った現在はほとんど在宅で仕事をしているそうです。「オックスフォードは素晴らしい街だけど、少し退屈かな」と語っていました。やはり香港は仕事の面でも暮らしの面でも、エキサイティングな街だったのでしょう。

 イギリスに本社がある夫の会社の中でも、多分に漏れず、権力闘争のようなものがあるらしく、社内政治に巻き込まれぬように中立の立場を取っている夫も、情報収集はしっかりとしているよう。今回も上司からいろいろと情報を得ていました。

 「僕には家族を養うという責任があるからね。一方に肩入れして、その人が社内で力を持ったときには自分も引き立てられ、力を失ったときは一緒に落ちて職も失うーということにはなりたくないんだ。権力争いからは距離を置いて、でも、実績は挙げて、会社にとっては必要な存在であり続ける努力はする。社内で登り詰めることは出来ないけど、良い給料とそこそこやりがいのあるポジションは確保するんだ」

 何事にも慎重な夫は、こういう考えで浮沈の激しい社内で生き残っているようです。信頼する元上司と今回会って話をすることが出来、良かったに違いありません。私たちも素敵なレストランで、美味しい料理をいただきながら、楽しい時間を過ごさせてもらいました。 

ランチをご馳走になったオックスフォードのレストラン

散策の途中で見つけた、素敵なカントリーハウス

  さて、今回の旅行に、息子は10年間眠るときはいつも一緒のクマのぬいぐるみ「ベア」と、ベアの友だち「ベア・ジュニア」をバックパックに詰めていきました。

ベアとベア・ジュニア

 ベアは息子の誕生祝いに私の友人から頂いたものです。これがなければ眠らないし、いつでもどこでも(もちろん海外にも)連れていったので、万が一なくしたときに備えて、同じぬいぐるみを後に購入し、ベア・ジュニアと名付けました。 

 ですが、やはり肌触りと匂いが違うらしく、息子はベア・ジュニアには見向きもしませんでした。全く同じクマのぬいぐるみなのに、持ち主に愛されないベア・ジュニアが不憫で、買ったことを後悔したぐらいでした。ベア・ジュニアの気持ちになると、とても切なくて、ときどき私が抱き締め、ベッドを整えるときにベアの横に置きました。家族には「ママが入院したら、ベア・ジュニアを持ってきてね」と伝えてありました。

 ところが、です。息子が10歳になる少し前でしょうか、急にベア・ジュニアをベアと一緒に可愛がり始めたのです。息子の中で、気持ちの変化があったのでしょう。ベア・ジュニアは我が家に来て9年目にして、ようやく、息子に可愛がられるようになったのでした。「ベア・ジュニア、良かったね」と私もほっとしています。報われる日があるのですね。

 東京の自宅から持ってくるときはバックパックの中に押し込まれ、イギリス国内を移動するときは、息子のスーツケースの中にギュウギュウに詰めこまれても、ベアもベア・ジュニアも喜んでいるに違いありません。

 

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