2016年1月21日木曜日

夫とランチ

  「ランチ、ご馳走してくれる?」 。娘の学校の保護者会の帰り、夫にメールをしました。学校から3駅のところに夫の会社があるので、学校に用事があるときは、時々一緒に昼食を取ります。今回は、「一緒にランチしない?」といういつもの言い方ではなく、謙虚な言い方で誘ってみました。すると、夫からは「もちろんだよ。何時にこっちに来られる?」と機嫌の良さそうな返信がありました。

 夫の職場の近くで待ち合わせました。が、メールの返信とは違って何となく沈んだ様子です。日本で開かれる予定だった会社の会議が、キャンセルになったというのです。話を良く聞くと、夫が沈んでいるのは、会議がキャンセルになった理由でした。

 主要メンバーのアメリカ人2人の子供が相次いで亡くなったため、会議そのものがキャンセルになったそうです。
 「亡くなった理由は?」
 「1人が自殺。もう1人が薬物」
 「そう・・・」
 「2人とも僕より少し上の、50歳前後かなぁ。だから、子供はたぶん高校生とか大学生ぐらいだと思う。2人とも、世界各国を飛び回っていて、すごく成功しているんだ。もちろん、たくさん稼いでいる。でも、いくら成功しても、たくさん稼いでも、子供が死んでしまったら、何の意味もない」
 「自殺も薬物も、子供たちが何かしらのサインを出していた可能性は高いよね」
 「うん。忙しすぎて、そのサインに気が付かなかったのかもしれない」
 「自殺は防げたかどうか分からないけど、薬物依存は初期に気付いて対処すれば、死ななくてすんだかもしれないね」
 「うん」

 ランチはいつもより、話が弾みませんでした。レストランから会社に向って歩きながら、夫は、「このことを知らせてくれたイギリス人も、ちょうど同年代なんだ。彼の声も暗かった。自分の身に置き換えて、考えていたと思う。僕は、子供たちと出来るだけ一緒に過ごすようにしているつもりだけど、もっと努力すべきかもしれない」。

 「大丈夫よ。十分やっているから」。自分の口から出たそんな励ましも、何となく薄っぺらに聞こえました。でも、それ以外、言いようがありませんでした。
 

 

 
 

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