2024年9月18日水曜日

諦めないこと

  先週の土曜日、新聞記者時代にお世話になったFさんに何年かぶりに会いました。Fさんは元西日本新聞記者で、現在は福岡で地元女性議員を増やすための活動をしています。今回、女性議員が多い東京都内の区議会を視察しにいらして、私に会う時間を作ってくださいました。

 Fさんとの出会いは20年以上も前に遡ります。Fさんと私は同じ記者クラブに詰めており、国会、政党、政治家や官僚への取材を一緒にし、取材手法や記事の書き方など、たくさん学ばせてもらいました。私ががんの治療で2ヶ月近く休んだときも、親身になって助けてくださいました。私が新聞社を退職した後も、親しくさせていただいています。

 コロナ禍の数年間は電話やズームでお話ししていましたが、今回、ようやくお会いできてとても嬉しかった。

 Fさんと話をしていると、現在の自分の無意識の行動が、実は新聞記者時代に培ったものだと気付かされます。仕事上で、その分野の専門家から「それは無理です。お金を払って専門家に頼んだほうが良い」と言われ奮起して、本を読んだり、無料相談を活用したりしてやり切った話をしたところ、Fさんが大笑い。

「その人、禁句を言ってしまったんだね。『あなたには無理』なんて」

「あははっ、確かに。私、無理とかダメとか言われると俄然やる気が出てしまう」

「それって、やっぱり記者やっていたからでしょう。私も、若い人が取材を断られたってしょげていたら、何言っているの!そこがスタートでしょうと発破をかけるもの」

「そうですよね。断られたところから取材が始まる」

  Fさんの指摘で、実は自分では自分自身のことを分かっているようで分かっていなかったことに気付きました。私は諦めが悪く、可能性がゼロでない限り何か方法はあるはずと思うタイプ。でも、単に諦めが悪いのではなく、「あなたには無理」「それは不可能」と人に突き放されたことで、逆に体の奥底からマグマのようなエネルギーが出てきて、そのエネルギーで猪突猛進することが多かった。普段はネガティブに考えがちだし、塞いでいることも多いのですが…。

 抗がん剤治療前に凍結した受精卵をがん克服後の7年後に子宮に戻して46歳で出産に至ったときもそうでした。45歳のときに不妊治療のクリニックの受付の女性から「こちらのクリニックでは治療は45歳までです。たとえご自身の受精卵でももう治療はできません。他のクリニックを探してください」と肩たたきにあいました。そこで奮起し、私の病歴から治療をしぶっていた院長先生に頼み込んで、子宮に戻してもらった。で、生まれたのが今中1の息子です。私が諦めのよい性格だったら、息子はこの世にいなかった。

 自著も、大手出版社のノンフィクション賞の最終候補に残り出版の予定で話は進んでいたのですが、突如担当編集者から「売れないという声が社内から上がったため、今回は断念させていただきます」と言われ奮起。自分で出版社を作って会社として登記し、編集も校閲も組版もデザインも印刷もすべて外注に出して、出版にこぎ着けたのでした。現在は2冊目出版に向け取材中です。

 軽井沢の家も、不動産屋さんの担当者に高飛車に「軽井沢で家を買うなら、3千万円はご準備いただかないと」と言われ奮起し、あちこち不動産屋さんを回り、「我々の仕事はお客様のご予算内で良い物件を見つけることです」という真っ当な不動産屋さんに出会い、ずっと安い価格で購入出来たのでした。

 現在通う博士課程も「あなたは医学のバックグラウンドがないし、年だから無理」と最初に目指した講座の教授に言われましたが、別の講座に出願。合格をいただきましたが、その指導教員からアカデミックハラスメントにあい一時は退学も検討。が、針の穴のような僅かな可能性を見つけ、何とか切り抜け、現在は別の教授の下、研究を進めています。大学としての責任からか私を引き受けざるを得なかった現在の教授も含めてアカデミアの世界ではずいぶん疎まれていますが、なんとか3年目まで来て、来年度博士論文提出の目途が立ちそうです。博士号を私に授与するかしないかは大学側が決めることで私の力の及ばないところ。ですので、目指せ!博論提出!です。 

 Fさんも女性議員を増やして女性の声を政治に反映させようと頑張っていらっしゃる。それも、地方から変えていこうという果敢な取り組み。地方は旧態依然とした体制も残り、高い壁が立ちはだかっていると思いますが、しなやかに、そして精力的に活動していらっしゃる。現在の女性の社会進出は、かつての諦めなかった女性たちやFさんのような力のある女性が切り開いてくれた道の上にあるのです。

 諦めずに、自分が出来ることをコツコツとやるー。自分の限界は人が決めるのではなく、自分が決めるー。定年退職後もより良い社会実現のため活動を継続されているFさんを目標に、私も微力ながら社会の役に立つよう頑張るぞ!と思ったのでした。

 

Fさんと行ったフランス料理店のメインディッシュ。白身魚のパイ包み

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