2022年7月24日日曜日

ケンブリッジからの報告 ③

  ケンブリッジ大学の高校生向けサマープログラムで「建築」を学ぶ娘のクラスには、8人のクラスメートがいるようです。出身はエクアドル、トルコ、アメリカ、中国、韓国、ブラジル、イギリス、そして日本から来た我が娘です。先生はギリシャ人だそうです。

 教室で建築に関する勉強をするほか、街に出て建物のデッサンをすると言います。これまでずっと自分に自信がなかなか持てなかった娘は、「ママ、私、けっこうデッサンうまいほうだと思う」と少し自信を持ったようです。

 幼稚園ではお絵描き教室に通い、インターナショナルスクールでもアートのクラスに力を入れてきた娘。親の私から見て、娘には絵の才能があると常々思っていたので、日本から一歩出てみることで自分の好きなこと、得意なことに気付いてくれたことが嬉しい。

 一方で、娘は自分のアイデンティティも意識したようです。「私は、日本人だなってつくづく思ったの。こうして外国に来てみると、日本の方がいいなって思う」と言います。私が学生のころ、アメリカで感じたことと同じ感覚を持ったようです。

「日本人って丁寧だし、がさつじゃないでしょう。そこがいいなって思うの」

 これはおそらく、外国に住んでみないと分からない感覚かもしれません。私は自由と可能性の国アメリカに憧れましたが、住んでみたら、日本の良さがしみじみと感じられた。レジに並ぶ女子学生が、買い物かごをフロアに置き、それを足でつついてレジの方に進むのを見て、『信じられない!』と驚いたこと。今でも大学の購買のレジと前に並んだ女子学生のことを鮮明に覚えているくらいです。

 逆に、留学生の中にはアメリカで水を得た魚のように生き生きとして、アメリカで暮らし続けることを選んだ日本人もたくさんいました。

 シカゴ育ちの夫は日本で暮らして20年経ちますが、アメリカより日本のほうが暮らしやすいと言います。私と出会う前は、外国に住むことなど考えたこともなかったそうですし、世間に馴染めないという感覚も持ったことがないと言います。それでも、外国に住んで違和感を持つこともなく、暮らしている。不思議なものです

 娘の「日本人」としての”気付き”についての話は続きます。

「女の子たちがね、これ下着?と思うような服を着ているの。とにかく露出が多い。服より肌の出ている割合が多いの。マジ、文化の違いを感じる。日本ではありえないし、私は絶対したくない服装」

 うん、うん。分かる、分かる。

「私が日本人だから日本料理屋さんに行こう!ということになって、お友達と行ったの。アボガドとマヨネーズをお米で巻いて、海苔で巻くこともしないで、『お寿司』として売っているんだよ。お米だって、日本のお米じゃない。パサパサしたタイ米?かな。恥ずかしかったよ、日本人として。こんなのはお寿司じゃない!って」

「お米にパクチーが入っているのが、最近の『お寿司』のトレンドらしい。ママ、パクチーだよ!パクチー! パクチーは何も悪くないけど、日本料理屋さんでお寿司として売るのは間違っているでしょう?」

 あぁ、分かるなぁ。その感覚。私が「日本人」としての誇りを持ったのも、日本人としてのアイデンティティをしっかりと意識したのもアメリカ暮らしがあったから。昨年の東京オリンピックの競泳女子200㍍個人メドレーで大橋悠依さんが金メダルを取り、日本の国旗が一番上に上がり、その下にアメリカの国旗が上がるのを見たときは、感極まって涙が流れたくらいです。まぁ、ここまでの感覚はどうかな?と自分自身に苦笑しましたが。

 こうして、日々貴重な経験をしている娘。2週間のサマープログラムもあと1週間を残すのみ。たくさん学んで、たくさん友達を作ってほしい。 

娘が送ってくれた、寮の部屋の窓からが見える風景の写真

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