2022年7月15日金曜日

旅立った娘

  娘が先ほど、成田空港からイギリスに向け旅立ちました。フィンエアでヘルシンキ経由でヒースロー空港に明日着きます。月曜日から2週間の日程で、ケンブリッジ大学でのサマースクールに参加するのです。

 一人でイギリスに行くことを不安に感じていた娘は、私や夫に一緒についていってほしいと願っていました。実際、大学の寮には1部屋に2人泊まれるので、私がついて行こうと思えば行けました。娘が学んでいる間、ケンブリッジのあちこちを散策したり、カフェでお茶をしたりも楽しいな。夜、娘と寮のベッドに寝ながら、学校で学んだことを聞くのはどんなに楽しいだろうと考えました。

 また、コロナ禍、在宅勤務が出来るようになった夫も、娘と一緒の寮に泊まらなくても、近くにホテルの部屋をとって、そこで仕事を出来ると嬉しそうでした。夫はイギリスに本社がある企業に勤めていますので、社内のネットワークを広げることも出来るとも言っていました。息子は小学校に通っていますので、一人が東京に残って息子の世話をし、一人が娘と一緒に行くといいねということも話していました。

 でも、私たちはその夢のような2週間を過ごすことをぐっとこらえて止めました。娘は今、ここで親から自立するべきなのだ。自立への一歩を踏み出すときなのだと考えたのです。

 イギリスや世界中から集まる高校生たちと一緒に学び、交流し、寮で食事を一緒にする。クラスで仲良くなったお友達と週末にカフェでランチをする。街を一人で散策する。そんな体験をしてほしい。

 私たちが待っていると、家族思いの娘のことですので、せっかく知り合ったお友達の誘いも断り、私たちと食事をするでしょう。それをしてはいけない。私たちにとって、娘との時間は何物にも代え難いものですが、ここは娘を一人で旅立たせなければならないと考えたのです。

 一人で行かなければならないーと覚悟をした娘は、ずいぶん不安だったようです。ここ1週間は、不安を打ち消すように、ずっと眠っていました。荷物をスーツケースに詰めなければならない昨日も、昼間ずっと寝ていたのです。

 今日のお昼には、娘のお友達のユミちゃんから私に電話がありました。娘がイギリス行きを不安がっていたと言います。「とても心配なんです。電話もつながらないので大丈夫かなと本当に心配で」と。

 お友達も私たちも心配しましたが、娘はギリギリになってポジティブな気持ちで支度を始めました。夫は荷物のチェック担当、私は早めの夕食に、娘の大好物の「鶏そぼろ丼」を作りました。

 車で成田空港に向かいました。フィンエアのカウンターで手続きを終え、ついさっき食べたばかりなのに「お腹が空いた!」という子どもたちのリクエストに応えて、マクドナルドのハンバーガーセットを食べさせました。そして、保安検査場へ。

成田空港のFINNAIRのカウンター

 「大好きだよ!サマースクール楽しんできて」「I love you! 」とセンチメンタルな気持ちで娘を抱き締める私と夫でしたが、息子は「くれぐれも体重を増やさないように。君に会えて良かったよ!」と、冗談を言いながら、娘を送ります。でも、最後にはさすがに抱き着いていました。「重いよ!」は娘は文句を言っていましたが、とても嬉しそうでした。

「おねぇねぇ、いってらっしゃい」

 保安検査場に入り、こちらを振り返って手を振る娘を見送りながら、娘の横に天国にいる息子の姿を見ました。娘と同じ背丈の息子はリュックサックを背負って、娘と一緒にこちらに向かって手を振っています。

 無事に産んであげられたなら、息子は娘と一緒にイギリスに旅立ったはずでした。でも、天国にいる息子は、双子の姉を見守ってくれているに違いありません。「無事にサマースクールを終えられるよう、見守っていてね」と天国の息子に祈りながら、見えなくなるまで娘に手を振りました。

 飛行機に乗り込んだ娘から自撮り写真付きのメッセージが届きました。飛行機に乗ったら読んでねと、手紙とお小遣いと2週間の出来事を書き留めるためのノートを渡していました。写真の娘の目には今にもこぼれ落ちそうな涙が溜まっていました。

 

 

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