2016年2月9日火曜日

ザ・ベア

 4日間の旅行中、4歳の息子は、超高齢ママの欲目かもしれませんが、とても頼りになりました。

 自分の服を詰めたミッキーマウス柄のスーツケースを引っ張り、背中にはヴァイオリンを背負って歩きました。飛行場の荷物受け取りターンテーブルの前で、大人たちに並んで、自分と私の荷物を待ちました。荷物をいち早く見つけ、取りに行きました。飛行機やバスの中でも愚図ることなく、行儀良くしていました。そんな息子を見ながら、「成長したなあ」と頼もしく感じました。

 しかし、元気な息子も慣れない札幌の寒さと雪遊びですっかり体調を崩し、熱を出してしまいました。救急病院で解熱剤をもらい、4日間の滞在を終え、新千歳空港から飛行機に乗って羽田空港に向かい、羽田空港でバスに乗り換えたときのこと。バスのシートに座った息子がつぶやきました。

 「早くおうちに帰って、ベアと一緒に寝たい」

 「ベア」はその名の通り、クマのぬいぐるみです。茶色い色をしています。息子の誕生お祝いに頂いたもので、もう4年間も一緒に寝ています。昼寝のときも、夜寝るときも、左手でベアをつかみ、顔にベアをすりすりとしながら、右の親指をしゃぶって寝ます。夜、目を覚ますと無意識にベアを探します。そして、ベアがいないと、「ベアがいない」と泣き、布団の中やベッドの横を見つかるまで探します。それほど、息子にとって大切なものなのです。

 そのような事情から、ベアがなくなったら困るため、息子が1歳のとき、頂いたベアの販売先を調べ、同じものを購入しました。違うのは首に巻いてあるリボンの柄だけです。でも、「ベア・ジュニア」と名付けたふわふわのベアには、見向きもしませんでした。やはり、「ベア」でなければ、駄目なのです。

 ベアでなければ駄目だと分かってから、旅行や外出時に持ち出さなくなりました。門外不出です。夫の実家があるシカゴや私の実家がある札幌に帰省するときも、「寝つきが悪くて困っても、なくすよりはまし」と、置いていきました。
 以前は「ベアを連れていく!」と泣きましたが、最近は「ベアを置いていくのよ」という説得に、「うん」と素直にうなずくほど、息子も成長しました。でも、今回、4日間離れて、かつ熱もあり、ベアが恋しくて仕方がなかったのでしょう。やっぱり、「ママより、ベア」でした。

 ベアはもう、くたくたになって、頂いたときのふわふわ感はありません。最初は毛玉を丁寧にとっていましたが、それもあきらめました。今は、ところどころ、擦り切れた状態です。首がもう取れそうなほど、よれよれになっています。たまに手洗いすると、水が茶色になるほど汚れています。それほど、ベアは息子に愛されています。ベアの匂いをかむと、息子の匂いがします。

 寝るときのおしゃぶりとセットになっているため、出っ歯が気になったこともありましたが、今は、少し出っ歯でも良いかなと思い、あきらめています。

 自宅に戻ると、息子は真っ先にベッドに行き、ベアをつかみ、顔にすりすりとしました。そして、ベアを顔につけたま、右の親指をしゃぶり、すやすやと寝ました。

 そんな息子の寝顔を見て、また、心が癒されました。息子はいつまで、ベアと一緒に寝るのだろうか? ベアが必要でなくなる日が、まだまだ先でありますように。そう祈りつつ、息子の寝顔を眺めました。

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