2024年10月23日水曜日

恐山へ

   いま、東北新幹線の中です。八戸で降り、在来線に2回乗り換え、下北へ。下北からバスに乗り、恐山に行きます。恐山に着くのは午後3時過ぎになります。宿泊予定のお寺・菩提寺の宿坊に真っすぐ行く予定なのですが、バス停からどれくらいなのか、全く想像もつかず、不安です。

 今朝はちょっとしたアクシデントがあり、気持ちが落ち込んでいます。昨日は息子の運動会で、張り切って3人分のお弁当を作り、観戦。楽しい一日だったのですが、帰宅後、今日の準備をしているうちに、ざわざわとした気持ちになり、今に至ります。

 この気持ちに拍車をかけたのが今朝の出来事です。朝早く起き、洗濯機を2回回して外に干し、息子の朝食を作り、自分のランチ用にサンドウイッチを作りリンゴを切ってジップロックに入れ、みかんも2つ準備しました。今日は乗り換えが何回もあり、それぞれが5分~10ぐらいしか乗り換え時間がないためです。

 それを紙袋に入れてリュックサックの隣に置いておいたら、何と、夫がゴミとして捨ててしまったのです。玄関に置いてあったのは新聞紙と雑紙の入った3袋。それと一緒に間違って捨ててしまいました。

 こういうのって、落ち込むんですよね。朝、雑紙をより分けて、袋にきちんと詰め直して玄関に置いたのは、私。このままゴミ捨て場に持っていけば良かったのですが、最後の最後に、夫に任せたのが悪かった。

 紙類のリサイクルは、箱類はつぶし、中に食べ物が入っていたりした場合はキレイに洗って干し、封筒の宛名部分だけ切り取って燃えるゴミとして捨てその他を雑紙を入れているごみ箱へ。それをごみ捨ての当日にまた、紙袋に詰め直して、朝玄関に持っていく。玄関からゴミ捨て場に持っていくのは一番簡単な部分でした。何で自分で仕事を完了しなかったのだろう?と後悔しました。

 マイコプラズマ肺炎にかかりましたが熱は下がって、外出をしても良いほどに回復しました。が、咳が止まらなくなることが頻繁に起きます。昨夜もベッドに横になったら咳が止まらず、気道が徐々に狭くなってきて、息も絶え絶えになりました。で、恐山で一人で息絶え絶えになるかもしれないと不安が増したのです。

 一昨日、すごくせき込み、気道がふさがりそうになったときは夫が近くにいました。夫は心配そうに近寄ってきて、椅子まで持ってきて私の側に座りましたが、床に座り込み、咳込んでいる私を見下ろすだけ。かける言葉は「カームダウン(落ち着くんだ!)」。「落ち着け? 咳が止まらなくて、細い気道でようやく息をしているのに? そういう人間がどうやったら落ち着くの? 落ち着くのは息が切れたときだよ!」と思いましたが、咳は止まらず、言葉も出ません。

 やっとのことで、「ウ、ウ、ウォーター」と伝えました。うなずいた夫が冷蔵庫に行き、持ってきたのは1リットルのペットボトル。そのキャップを開けて、私に渡します。

 もう、私は座り込んでいますので、力もなく、それを飲むこともできません。そのときに悟りました。「近くに人がいても、死ぬときは死ぬんだな」と。

 こういうことは本当に些細なことですが、体調が良くないときは、気力がうんと萎えるんですよね。別に夫を頼っているわけでもなく、当然、自分のことは自分でしているんですが、「お弁当は紙袋に入っているけど間違って捨てないでね、でも、紙類が入った袋よりずっと重いから気付くとは思うけど」とか、「咳込んでいる人には背中をさするとか、水をコップに入れて渡すんだよ」とかいちいち伝えなければならない。

 夫は私が病院で瀕死の状態のときに、「シカゴのママとダッドにこちらに来てもらう。ママとダッドも君に最後のサヨナラを言いたいと思う」と泣きながら、言ってのけた人。そのとき、私は酸素マスクをしていましたが、「だ、だ、大丈夫だと思う。まだ、死なないから。ママとダッドを呼ぶ前に、せ、せ、先生に私の状態を、聞いてみたら? た、た、たぶん、本人を前に先生も言いにくいとお、お、思うから、病室の外で聞いてね」と夫がすべきことを逐一伝えなければなりませんでした。こういう局面、結婚22年で数知れず。

 頑張って生きているつもりなんですが、死者の魂が集まると言われる地に行くときに(まぁ、自分で計画したことですが)作っておいたお弁当を捨てられるとか、咳込んで死にそうなときに1リットル入りのペットボトルを渡されるとか、というようなこと残念なことが続くと、ふと、あぁ、もういいかなって思ってしまいます。

 八戸に無事着き、乗り換え時間9分というギリギリの中で、「青い森鉄道」に乗り換えました。可愛らしい駅員の女性に「PASMO使えますか?」と聞くと、「使えないんですよ」ととっても申し訳ない表情で言われてしまいました。前で券売機で切符を買っているシニアの男女、そして男性は「お金を入れたのに、切符が出てこない」とか「買い方が分からない」と言っています。分かりますよ、難しいですよね。私もここ不慣れなので、お手伝いしたくても、教えて差し上げられません、、、。

 切符を買って、やっと「青い森鉄道」に乗りました。気持ちが少し上がるような、明るい青の電車でした。なんか、こういう素朴な感じ、いいなぁ。それに乗ったのは発車2分前。間に合いました。

 次は「野辺地」というところで大湊線に乗り換え、「下北」に行きます。乗り換え時間5分。下北では、下北交通というバスに乗り、恐山へ向かいます。

 夫に「お腹、空いて死にそう。何で、私の弁当捨てるの?」とメッセージを出しました。少なくとも、最果ての地に向かう妻は、生きているというメッセージです。本当にもう!お腹すき過ぎて、死者の魂に引っ張られるじゃないの!

 

 

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