2024年4月24日水曜日

撃沈

 昨日、研究所で自分の研究の進捗を発表しました。「よく分からないんですけど」とあれこれ質問され、しどろもどろの答えをし、完敗でした。研究所を出た後、涙が出そうになりました。

 電車の駅に向かう道すがら、まずフェイスタイムでオーストラリアにいる娘に連絡しました。幸いなことに、出てくれました。画面に出たニコニコ顔での「ママぁ~」というひと声で心がすうっと軽くなりました。

 オーストラリアは2時間時間が進んでいますが、まだ寝る前の8時でした。「今、何していたの?」と聞くと、「ご飯、食べてたの」と言います。「何食べてたの?」「作り置きの炒飯と鶏のから揚げ」。偉いぞ!娘の寮生活は順調なようです。

娘が送ってくれた作り置きの食べ物の写真。左が炒飯、右が鶏の唐揚げ

 「ママ、落ち込んでいるの」。「えっー、大丈夫?どうしたの?」と娘。ブログには何度も書きましたが、娘とのおしゃべりで私は本当に癒されるのです。娘は優しく、包容力があり、そして人の話をよく聞いてくれる。19歳の大学生は悩みも不安もたくさんあるはずなのに、気持ちが落ち込むことも多い母を支えてくれるのです。

 「ママさぁ、自分の能力をずっと超えた所に挑戦して、疲れているの。自分の不得意なところであがいている感じ。山の7合目ぐらいにくると、向こう側にさらに険しくて高い山が見えてきて、さぁ、またチャレンジしようと思ってしまったことを後悔している」。娘はこう返してきました。

「ママ、それちょっと違うと思う。7合目ぐらいまで登って目前には何もなかったんだよ。ママはさ、7合目まで来て見通しが良くなると、双眼鏡を取り出してあちこち見渡して、さらに険しくて高い山を見つけて、そこに最初から登ろうとするんだよ」

「そうかぁ、双眼鏡を使ってまで、難しいことを見つけようとするんだね。自分でもほとほと疲れる。今年還暦なのに、大学院で苦労するのはちょっと違うよね。普通はさ、ママぐらいの年齢で博士号を取得しようとする人は、自分の積み上げてきた仕事や経験の集大成としてだよね。もしくは、自分がずっと興味を持っていたことを追求するために学び直す。ママは長い病気の後に仕事の方向転換をしなければならなくて、新しい道を選んだ。それが、想像していたよりずっと困難な道だったということかな」

「ママ~。ママはよく年齢の話をするけど、これは年齢の問題じゃないよ。あえて、辛くてチャレンジングな道を選ぶ性格の問題だよ」

「そうかなぁ。もう、難しいことだらけで、自分が何が好きで何が得意なのかも分からなくなってきた。少なくとも、同じ学生だから、新しいことを学ぶ娘の大変さは実感できるぐらいかな。良いことがあるとすると」。気持ちを建て直すために、気晴らしに読んだ本の中に「自分の得意なことは意外と分からないもの。家族や友人に聞いてみましょう」とありましたので、娘に聞いてみます。

「ねぇ、ママの良いところって何?」

「ママの優れているところはね、文章が上手で、写真が上手なこと。そして、料理上手。特にすごいのは、冷蔵庫の中の残り物で、美味しい料理を作れるところだよ」

「そっかぁ、ありがとう」と私。文章を書くこと、写真を撮ること。これは新聞記者時代に鍛えてもらったこと。料理は料理上手な母から学んだことです。

 気持ちが軽くなりました。

「ありがとう、話を聞いてくれて」

「どういたしまして。電話ありがとう。大大大好きだよ!」と娘はにっこり笑って、電話に向かってキスをしてくれました。本当に良い子で、私は恵まれています。

 次に電話をしたのが、もうかれこれ30年以上は友人として連絡を取り合っているKさん。私が新聞社の前に勤務していた会社の先輩です。この会社を退社した後も、電話で話をしたり、勤務地が同じときは、ご飯を食べたりして、互いの近況報告をし合っています。同世代の日本人男性の視点でのアドバイスがほしいときにも、相談をします。留守番電話になっていましたが、すぐ折り返しで電話をくれました。

「もう、辛くて…。めちゃくちゃ頭の良い人たちの前で、自分でもまだ自信を持てないことを発表する。そして、逃げ場のない、冷静な指摘って、本当に堪えるの」

「それさ、自分との闘いでしょ? 自分の能力が足りないということでしょ? 前のように指導教員が全く指導してくれなくて、悩んでいるときより前に進んだんじゃないの?」

「うん、確かにそう」

「まぁ、最も難しい場所に行っているんだから、その苦しみは当然だよ。簡単に学位は取れないと思うよ。それに、自分で好んで、険しい道を選んでいるんだから」と笑い飛ばします。

「確かにそう。もう、こういう自分がほとほと嫌」

「まぁ、その年でも成長しているんだから、大したもんだよ。まずは、支えてくれるご主人や子どもたちに感謝するべきだね」

「いつも、それ言われるよね。日々、感謝の気持ちは持っているつもりなんだけど、目の前に困難が立ちはだかると、そちらにばかり意識がいってしまう」

「そうだよ。君の場合は、生きているだけで御の字だよ。生きていることに感謝しなきゃ。幸運にも病気を克服して、今は健康になっている。そのことに感謝することだね。じゃあ、またご飯でも食べよう」

 彼はがんで奥様を亡くしています。ですので、がんを克服できたことに感謝をすべきだーといつもたしなめられるのです。そして、私のちっぽけな悩みを笑い飛ばしてくれるのです。

 2人と話し終わり、電車に乗りました。先ほどのどん底の気持ちは持ち上がっています。ほどなく、夫からテキストメッセージが届きました。「いま、どこ? 雨降っているから迎えに行こうか?」

 駅には夫が車で迎えに来てくれました。帰宅すると、夕ご飯が食卓に用意されていました。メニューは私が昨日リクエストした焼き鳥でした。白ワインも添えてありました。夕ご飯を作って待っていてくれた夫と息子に感謝。

息子の4日目(4月21日)の2段弁当。おかずは豚肉の生姜焼き。左と右は夫と私の分

息子の5日目(4月22日)の2段弁当。おかずはハンバーグ

息子の6日目(4月23日)の2段弁当。鶏そぼろご飯。すでにネタ切れで初日と同じ



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