2023年11月15日水曜日

夜の甘辛チキン弁当

  一昨日、落ち込む出来事がありました。自分の身に降りかかることは何とか対処できると思うのですが、社会や組織の中での関わりなどについては、すぐ考え込んでしまいます。一昨日は心が乱れ、帰宅後ベッドに横になり大泣きしました。

 息子は塾に行っており、夫も自室にこもってました。ひとしきり泣き続けたら、お腹が空いてきました。その夜は夫が夕ご飯の担当で、ラム肉のパイを用意していました。私はラム肉が苦手なので、遠慮すると伝えていました。

 「あの唐揚げ弁当が食べたい」と急に思い立ちました。2つ隣の駅近にある、お弁当屋さんです。ここは息子の英語塾の近くにあり、以前、息子の塾の帰りにいつも寄るレストランが満席だったので、仕方なくこのお弁当屋さんで買って公園で食べたら、思いのほか美味しくて、息子も私も大満足だったのです。そのお弁当屋さんの名物”甘辛チキン”が食べたくなりました。

 寒かったのですが、コートを羽織ってマフラーをぐるぐる首に巻いて、自転車で駅に向かいました。駅の駐輪場に停めて、電車に乗り込みました。次の次の駅で降り、そのお弁当屋さんへ。開いているか調べもせず行ったのですが、開いていました。お客さんが何人も並んでいました。私の前のお客さんは男性で、唐揚げ弁当を4つ注文していました。残業組の買い出しでしょうか? 同僚と夜、他愛のない会話をしながら唐揚げ弁当を食べるー。そういうのっていいなって勝手に想像しました。いずれにせよ、皆、このお弁当のファンなのですね。

 甘辛チキン弁当を買い、近くの公園に行きました。ベンチに座りました。電車に乗っている最中、札幌の親友にラインをしていました。

「わたし、ちょっと落ち込んでいるの。なんだか、辛い。2つ目のがんというより、人生について。私は間違っていたのかな?と考えてる。病気の後、社会復帰しようと頑張ってきたけど、疲れたし、悲しい。ごめんね、愚痴で」

「むっちゃん、やっぱり落ち込んでいるんだね。胃がんは内視鏡手術で取り除けること、本当に良かった。むっちゃんの人生、何も間違ってなんかいないと思うよ」

 親友に、お弁当屋さんとお弁当の写真を送りました。暗い公園でお弁当をパクパクと食べました。会社帰りでしょうか? 沢山の人が公園の前の道路を通り過ぎていきます。「このおばさん、夜一人で公園のベンチでお弁当食べてる。寂しそう」と思われるかな?とちょっぴりおかしくなりました。もう、そんなことも気にしません。それよりも、一筋縄ではいかない人生でつまずいている状態を、少しでも気分を軽くして乗り切るほうが大切。夜、一人公園で唐揚げ弁当を食べる。そんな自分を笑う。そういうことが必要でした。




 がん治療がうまくいかないときは、混雑した渋谷のスクランブル交差点を見下ろせるカフェに行き、雑踏を見ながら、自分の抱えていることなんて小さいーと思うようにしました。年齢を重ね、もう、渋谷のカフェに行くパワーもないので、駅の近くの公園で、お弁当をパクつくのです。

「自分なりに一生懸命生きてきたし、いろいろあったけど、頑張ってきたつもり。でも、社会からは拒否されるし、頑張った結果がまた、がんか…と思ったら、やりきれなかった」

 お弁当を食べている間、親友がこんな重たいラインの会話に付き合ってくれました。一人で公園のベンチに座っていましたが、一人ではありませんでした。友達ってありがたいなぁとしみじみ思いました。

 お弁当を半分ほど食べて、お腹が一杯になると、生きる元気が出てきました。親友に「いつも、ありがとう。話を聞いてもらって、気持ちが落ち着いたよ」とラインを送り、電車に乗りました。自宅に着くころには、少し、気持ちが軽くなっていました。もう、涙も出ませんでした。

 

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