2015年12月30日水曜日

2015年 私の挑戦 ベスト5 ⑤自転車に乗る

 今年、私はいくつかの新しいことに挑戦しました。約10年間の病気との闘いを経て、ようやく体調も安定し、40代に出来なかったことを試してみたくなったのです。それらはいずれも心がワクワクするような体験で、「私はまだまだ、大丈夫」と自信を持つきっかけにもなりました。「2015年 私の挑戦 ベスト5」を振り返ってみたいと思います。

 まず、大きな挑戦の一つは自転車に乗ったことです。いわゆる「ママチャリ」です。息子の幼稚園入園に合わせました。これは、娘が幼稚園に通った3年間に私が憧れつつ、出来なかったことでした。

 44歳から46歳までのこの3年間は、とてもたいへんな時期でした。
 再再発した悪性リンパ腫をたたくための抗がん剤治療と放射線治療。抗がん剤治療中に悪化した、不整脈を治すための手術。放射線治療中に起きた敗血症ショック(死ぬ目に会いました)の治療。自己免疫が血中のヘモグロビン(酸素を運ぶ働きをする)をたたく自己免疫疾患=自己免疫性溶血性貧血=の治療。自己免疫が血中の血小板(血を止める働きをする)をたたく自己免疫疾患=特発性血小板減少性紫斑病=の発病と治療。これらの治療に伴う副作用もありました。体調が悪い状態が続きましたので、娘の幼稚園への送りは夫に頼み、帰りは徒歩やバス、車で迎えに行きました。ですので、自転車に乗るのは、夢のまた夢だったのです。

 私にとって”健康の象徴”であったママチャリに乗ることは、とても大きな意味がありました。自分の体調が安定したという自信を持てたということです。それまで一年ぐらいかけ、体調が悪いときには出来なかったことを少しずつ試していったのです。たとえば、寒いときの外出(自己免疫性溶血性貧血は寒さで悪化する)、外出時に複数の用事を足す(長い間、外出時の用事は1つだけと自分を律してました)、予定に合わせて体調を整えるのではなく緊急時にも対応してみる(葬儀への参列や家族の怪我や病気のときの臨機応変な対応)などです。

 電動アシスト付き自転車は、私の気持ちに合わせて、思い切った色を選びました。ターコイズブルーです。この明るい色は、いとしい息子を軽やかに送迎する喜びと私の晴れやかな気持ちを表していたからです。50歳でターコイズブルーの自転車はやり過ぎかしら?とためらう気持ちがありましたが、思い切りました。思い切ったついでに、ターコイズブルーのスプリングコートを合わせて送迎時に着ることにしました。

 4月、息子を後ろに乗せて、初めて自転車をこいだ喜びは言葉では表現できません。「ママ、すごいね。ジェットコースターみたいだね」という息子の言葉に、私は思わず泣きました。自転車を一生懸命こぎながら、泣きました。

 息子が通う幼稚園には、娘のときに一緒だったママも数人います。「むっちゃんが自転車に乗るなんて、信じられない」と驚かれました。「すごいね。全身、ターコイズブルー」と言うママ友達のコメントに、私は大笑いで返しました。気分は晴れやかでした。

 息子の自転車送迎に慣れたころ、電車通学する娘を駅に迎えに行きました。娘は駅から出てくると、息子が乗る後ろのシートに無理やり座ろうとします。大ゲンカが始まりました。
 「いいじゃない、1回ぐらい、おねぇねぇに乗せてくれても」。娘は真剣です。
 「嫌だ!これは僕の!」。息子が手足をバタつかせ、抵抗します。

 子供っぽい(実際、子供なのですが)態度を取る娘をどうしたものかと考え、提案しました。
 「家に帰ったら、ママの後ろに乗ってみる?」
 「うん!」。娘は素直に了承し、弟とのケンカを止めました。

 帰宅し、息子に「家から出ちゃだめよ」と言い聞かせ、身長150㌢の小5の娘を自転車の後ろに乗せて、私は近所を走りました。
 娘が私の体にしがみ付き、「わー、わー」と雄叫びを上げ、泣きました。
 「ママの自転車の後ろに乗るのが夢だったの。ずっと夢だったの!」

 ママチャリは私の夢だけでなく、娘の夢でもあったのです。


 

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