2015年12月28日月曜日

クリスマスに思う

 スター・ウォーズを家族で見に行きました。クリスマス当日の25日、場所は六本木ヒルズにある映画館です。私は前作を見ていないので内容が良く分かりませんでしたが、ポップコーンをほおばり、コーラを飲みながら見るという映画の楽しみ方が好きなので、満足しました。

 娘と夫に内容を解説してもらうため、ヒルズで夕食を取ることにしました。クリスマスで金曜日ということもあり、子連れで入れそうなレストランはどこも満席か、クリスマス特別ディナーで高過ぎるかのどちらかのため、早々にあきらめ、メキシカンのファストフード店に行くことにしました。店内の席は埋まっていたため、寒さに震えながら、外のテーブルで食べました。そのときのことです。

 私たちの横を、白人の男性が大きなゴミ袋を両手に持って、通り過ぎました。20代後半から30代前半ぐらいでしょうか。その男性が出てきたのは、ファストフード店の横にある、おしゃれなレストランです。その日は貸切で、多くの外国人がパーティを楽しんでいました。男性はそのレストランで働いていました。

 六本木は外国人が多い街です。六本木ヒルズには、知的な雰囲気を漂わせている外国人がたくさんいます。おそらく稼ぎが良いのであろう、彼らが醸し出す雰囲気には独特のものがあります。私が、ゴミを捨てに行った男性を気にしたのは、彼がレストランで楽しそうに食事をする側にいるような風貌をしながら、外国人客が多いレストランで下働きをしていたからです。彼にはファストフード店などで働く若い外国人たちの屈託のなさや明るさがない。真面目さと一種の暗さを感じさせました。私は夫に話しかけました。

 「今、ゴミを捨てに行った男性見た?どうして、レストランの従業員として働いているのかしら?」

 「恋する日本人女性を追いかけてきたのかもしれないよ」。ロマンチックな答えでしたが、私は、賛同しません。

 「異国の地のレストランで下働きしているのよ。学生や若い人ならまだしも、ある程度の年齢よ」
 
 余計なお世話でしょうが、私は彼の物語を想像しました。日本で生まれ育ったという可能性もあるでしょうが、おそらく違うでしょう。自国でキャリアをスタートさせているはずの男性が、異国の地にいる。何が彼を日本に来させたのでしょうか? レストランに戻り、料理を運んでいる彼の姿を窓越しに見ながら、この仕事が、彼の目標を達成するためのステップであってほしいと願いました。

 私はふと、娘に私と夫の学生時代の話をしなければならないと思いました。

 「ダディとママはね、大学の学費を稼ぐためにいろいろ働いたのよ。ママはね、車の部品を作る日本企業で翻訳の仕事をしたり、留学してくる学生たちの世話をしたりしたの。ダディは・・・」

 「いろいろやったよ。ゴルフ場で働いたり、レストランのウェイターやったり」

 娘が素朴な疑問をぶつけます。
 「どうして働かなければならなかったの?」

 「ダディは4人兄弟だろ。グランパとグランマは4人を大学に入れるのに、経済的にたいへんだったんだよ。だから、大学の費用の半分は自分で稼ぐように言われていたんだ」 

 「ママはね、外国に行くことに大反対されたの。だから、学費は自分で稼がなければならなかったの。いい、あなたは恵まれているのよ。インターナショナルスクールに通って、ヴァイオリンを習って・・・」

 夫が懐かしそうに続けます。

 「毎週水曜日が、1ドルで映画を見られる日だったんだ。ママと良く行ったよ。今日見たスター・ウォーズの最新作みたいな映画はないんだ。古い映画ばかりでね。でも、ポップコーンを食べながら、楽しかったよな」

 娘に自分の境遇に感謝するように教えながら、私は隣のレストランで働く男性に心の中で話しかけます。 いつか、現在のことを家族や友人に笑って話せる日が来ますようにと。

 「若いころは、日本で働いていたんだ。レストランで下働きさ。クリスマスには外国人が貸切でパーティをしていて、僕は料理を運んだり、ゴミを捨てにいったりしていた。当時は何で自分はあちら側にいないんだろうと悔しい思いをした。でも、その悔しさをバネに頑張ったんだ」
 
 

 

 

 

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