2023年10月9日月曜日

Yさんのこと

  人との出会いは、人生を豊かにします。私にとって、学生時代に出会った友人やかつての職場の同僚・先輩、仕事を通じて出会った人たちはとても大切な存在で、大病をした後はそれまで以上にその方々との友情を大事にしていきたいと思うようになりました。

 先日、私が心から信頼し、慕っている先輩と1年ぶりに会いました。私の新聞社時代の上司Yさんです。初任地・室蘭の報道部でデスク(記者たちの原稿をチェックする責任者)だった方です。

 Yさんは、駆け出し記者の私を日々丁寧に指導してくれ、お正月にはご自宅にも招いてくれました。奥様がたくさんの手料理を準備してくださり、3人で楽しくお話ししたのはとても良い思い出です。Yさんは、私が赴任してから1年足らずで転勤してしまいましたが、その後も、折々に励ましのメールをくれました。

 Yさんと頻繁にメールのやり取りをするようになったのは、私が退社し、Yさんが私と同じ病気を患った後でした。Yさんが私の病気のことを知り、同僚を通じて、再度連絡してくれたのです。

 それからは、育児をしながら、社会に復帰しようと奮闘する私をいつも励ましてくれました。奥様の絵の展覧会が東京であるときは一緒にいらして、時間を作って私に会いに来てくれました。お会いするのは、私の自宅最寄り駅の隣駅にある和食店。お料理を食べ、お酒を酌み交わしながら、時事問題や会社の近況、社会復帰への険しい道のりのこと、泣き笑いの育児エピソードなど、Yさんとお話しするのが私にとってとても楽しみな時間でした。また、一昨年には娘と一緒に札幌のご自宅にお邪魔し、奥様の美味しい手料理をいただきながら、たくさんお話しさせていただきました。

 私が自分のことを包み隠さず話し、それでも自分は受け入れてもらえるんだとYさんに対して思えるのは、Yさんへの信頼感のほかに、良い紙面を作るという同じ目標に向かっていた、さらに同じ病気と闘ったという連帯感を持っているからだと思います。

 病気の後、職場を辞めてから私がしみじみと感じたのは、私は社会のどこかに自分の居場所を必要とする人間だということでした。職場で仲間と一緒に仕事をし、帰りは居酒屋に寄ってワイワイと仕事の話をしたことを、とても懐かしく感じていました。フリーランスの仕事ではそれを得られず、大学院でも基本的には一人です。習い事もしていますが、やはりそこも私の居場所ではありません。子どもたちの学校でPTA活動もしましたが、自分はアウトサイダーであるという感覚はいつも持っています。

 社会に居場所を見つけることの難しさを痛感しているからこそ、かつての仲間たちとのつながりを大切にしたい。互いに信頼し合う友人とのかけがえのない時間を大切にしたいと思っています。

 今回は、最近夫とよく行く、日本酒が美味しい店にYさんをお連れしました。いつもご馳走になっているので、今回は私がーと考えていましたが、Yさんは「そんなことは許されません。私はあなたの元上司なのですから」ときっぱりと仰り、またご馳走になってしまいました。

 Yさんも私も、定期的に検査を受ける身ですが、このように楽しい時間をこれからも持てることを願ってやみません。

Yさんと一緒に飲んだサッポロビール

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