アメリカから義弟家族が来日しました。10泊11日の日程で、東京・名古屋・京都・奈良を巡り、東京の我が家には2日間訪れ夕食を共にし、軽井沢の家には2泊3日しました。
5人家族を迎えるにあたり、夫と私で両方の家の整理整頓と掃除を徹底しました。東京の家には普段、ダイニングテーブルやキッチンカウンターに書類など物がたくさん積まれていたのですが、それを数日間かけて目を通して、処分したりファイルに入れたりし、片付けました。
また、2階のリビングにも物をあれこれ置いていたのですが、これも納めるべきところに納め、洗濯後にかごに入れっぱなしになっていた山のような量の衣類・寝具にもアイロンがけをしました。
忙しく作業をしていると、中1の息子がこんなことを聞いてきました。
「ねぇ、いとこたちって、She ? それともHe?」
「3人姉妹でしょう? 会ったのはあなたが小さなころだから、忘れちゃった?」
「忘れてないよ。いや、最近さ、難しいじゃん。見た目は女子だけど、心は男子とか。間違うと失礼だから、事前に聞いてみた」
英語は一度固有名詞が出てきた後は「She」「He」などの人称代名詞を使います。息子はそれを聞いてきたのです。
「あっ、代名詞ね。今回日本に来るいとこたちは全員女子で、心も女子だから、She で大丈夫」
「オッケー」
日本でも最近マスメディアで性的少数者について報道されていますが、米国ではもう随分前から、その立場の人たちを尊重するのは当然のこととなっています。娘の通っていたインターナショナルスクールでも、たとえば、女子が女子と付き合っていても、普通にオープンでした。
ママさんたちも、特別視することはありませんでした。ただ、名前や代名詞には気を遣っていたと思います。自分の性別に違和感を抱いている子にはその子が呼ばれたい名前で呼び、そのママさんにはママさんが自分の子供に使いたい名前や代名詞を使うなど、です。ここを間違うと、子供やママさんの心を傷つけてしまうからです。
娘から聞いた話では難しかったのは、複数の人格を持つ人をその人が持って生まれた性別である「She」ではなく、「They」と呼ぶことだったといいます。確かに、ここまでになると、対応が難しいです。
親としては、このセンシティブなことについて他人の子供への気遣いは当然で今や特別視することもありませんが、自分の子供が性的少数者だとまた話は別のような気がします。でも、夫のきょうだいと姪っ子甥っ子9人のうち、同性のパートナーがいるのは3人。それを義母、義姉妹は自然に受け入れています。そこには衝突も葛藤もなく、かなり遅れを取っている日本に住む日本人の私としては、米国人の寛容さに感心するだけでなく、もう、少数者とも言えないのかなとも受け止めています。もちろん、彼らが社会の偏見に苦しむ場面はあるでしょう。でも、それも表面には出さないけど言動からにじみ出る、白人のアジア人蔑視のようなものだろうか?と想像したり。
ただ、寛容な米国人でも、子供が別の性で生きたいと主張するときは平常心ではいられないようです。愛する娘から男の子として生きたいと言われたママさんの苦悩は察して余りあるものでした。思春期の気の迷いでこの時期を過ぎればやっぱり女の子として生きるーと言ってくれるのではないか。でも、手術をするなら体が女性らしくなる前にしたほうが良い。そして、女子から男子に変わるタイミングは…。ラインに送られてきた、その子と我が娘がおどけている写真に添えられた「このころが懐かしい」というメッセージに、私も泣きました。どれほどの苦しみだろうかと。
でも、その子は素敵な男子として米国で人生の再スタートを切りました。ママさんからのラインのメッセージも明るく、吹っ切れたものでした。子供に幸せになってほしいー。そのために、親のほうも自身の葛藤を乗り越え、ありのままの子供を受け止め抱き締めるのです。
さて、話はいつものように別の方向に行ってしまいましたので、元に戻します。私たちは東京だけでなく、軽井沢の家にも義弟家族が来る3日前に行き、家中を片付けました。軽井沢の家はいつもはすっきりとしているのですが、屋根裏リフォームのために、そこに押し込んでいた物を全部、1階の畳の部屋に下ろしていたのです。
8畳の畳の部屋に置いてある荷物を屋根裏に上げるのは2日がかりの仕事でした。屋根裏の工事はまだ3分の1しかできていないので、次の工事に備えて(軽井沢は7月25日から8月31日までは工事が出来ないのです)、この3分の1のスペースに物を押し込む予定でした。結果的に物があり過ぎて出来ず、弟家族が来ている間だけは工事中のところにも物を置き、弟夫婦が帰ったら、また、一部を8畳の部屋に下ろしてこようということに。
こうして、弟家族5人を受け入れる準備を整えたのでした。
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玄関の「WELCOME」サイン。義父母の別荘に飾ってあったものを譲り受けました
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玄関前には義母からもらった風鈴。「Live」「Love」「Laugh」-のサインを見ると「人生はこれに尽きるよなぁ」と思います
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工事のため、屋根裏の荷物を置いていた畳の部屋を片付け |
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これを屋根裏に再び上げるのは大変な作業でした。ほとんど子供関連のもの。捨てられない… |
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暑いのでかき氷の準備も |
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弟夫婦には私たちの寝室を使ってもらうことに。布団と枕はクリーニングに出し、寝具も洗って糊付けしアイロンがけもばっちり |
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姪っ子たちのために布団を3組レンタルし、扇風機も準備。姪っ子たちは畳の部屋に寝てもらい、私たちはリビングに布団を敷いて寝ました |