2021年3月12日金曜日

「あの日」

 東日本大震災から10年を迎え、新聞やテレビでは被災地からの報道が続いています。

 昨日はNHKのニュースで、東京電力福島第一原発事故の影響で全町民が避難し、今年一部の地域で避難指示が解除された福島県双葉町の様子が映し出されていました。小学校の各教室の机の上にはランドセルが当時のまま置かれ、卒業式の紅白幕がかかった体育館の床には埃が積もっていました。子どもたちの驚きと不安、そして恐怖を想像し、胸が痛みました。

 「あの日を忘れない」。メディアが使うこの言葉を、被災者の方々はどう感じているのかといつも思います。全校児童108人のうち7割にあたる74人が死亡・行方不明となった石巻市の大川小学校を昨年取材させていただいたとき、遺族の方は自分の子どもが亡くなった日を「あの日」と言われ続けることへの複雑な思いを語っていました。

 自分の家族を友人を家を一瞬のうちに奪われてしまった。でも、悲しみを抱えながらも、生活を再建させなければならない。その苦労はいったいどれほどのものかと、胸が詰まる思いがします。想像を絶する苦しみだと思います。

 あの日を忘れないことも大切です。でも、あの日を忘れることで今日を生きることが出来る人もいるのではないか。どんなに悲しくても、どんなに苦しくても、人は生き続けなければなりません。悲しみや苦しみをしばし忘れることで、生き続けることが少し楽になることもあるのではないか。そう考えます。

 被災者の方々の暮らしが穏やかで、悲しみや苦しみの中にも時に笑いのある日々でありますことを、心から願います。

 

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