2023年7月17日月曜日

白い花

  2人の子どもを育て、日々慌ただしい時間を過ごしていますが、毎日のように思うのは「私は駄目な母親だなぁ」ということです。子どもへの愛情は溢れんばかりなのに、ちょっとしたことで厳しく叱ってしまったり、子どもの思いに気付いてあげられなかったりするのです。

 今日は一つのエピソードを正直にお話ししたいと思います。皆さんだったら、どう対応するでしょうか?

 先週の土曜日に授業参観がありました。3時間のうち1科目は理科の授業。前々日の木曜日、息子がこう私に言いました。

 「ママ、理科の授業で白い花を持っていきたいんだけど、買ってくれる?」

「いいよ~。いま夕ご飯作っているから、自分で買ってきて。いくらあげたらいいかな。500円? 500円だったら買えないかもしれないから、念のため、1000円渡しておくね」

 「ありがとう!お花屋さんに行ってくる!」

息子は張り切って出ていきました。

 しばらくして、帰宅した息子。第一声は「お花って高いんだね」でした。そして、ガーベラとアルストロメリア1輪ずつを見せてくれました。私はびっくりして言いました。

「これだけで990円? あまりにも高すぎるよ」

 それを見ていた娘が続けます。

「あーあ、騙されたんだね、子どもだから。これ2本で990円って高すぎると思わなかった?」

 息子は申し訳なさそうに私を見ます。私はさらに息子をきつく叱りました。「1000円を稼ぐって、すごく大変なんだよ。知っているでしょ? なんで、一番高い店で買ってくるの? 高かったら、他にもお花屋さんあるでしょ」

 我が家の近くにはお花屋さんが4軒あります。聞いてみると、息子は一番高い店で買ってしまったようです。

 私たちはおこづかいが足りない息子に仕事を与えますが、庭の枯れ葉を拾って200円、ブラインド洗いが1枚50円、オーブンやグリルなど油のこびりついた場所を洗って500円など、かなりシビアな価格帯です。ですので、お金の価値は分かっているはず。

 「理科の実験に使ってすぐ捨ててしまうんでしょ。それなら、小さなお花一輪でもいいから、たとえママがあげたお金でもいいから、はい!ママにと欲しかった」と話がずれて(本音が出て)しまいました。美しい一輪の花を自分の心を癒したり、誰かを喜ばせるために使うのではなく、無駄に使ってしまうことに抵抗があったのかもしれません

 息子はふてくされて、家の外に出てしまいました。夜でしたが、私も夫も放っておきました。息子の携帯電話から夫に「探さないで!」というメッセージが届きましたので、私たちも「そう、じゃあ、好きにして」とばかりに、放っておきました。1時間ぐらいたってから、待てども待てども親が探しに来ないと観念したらしい息子は、自ら、帰宅しました。私はそれでも息子を放っておきました。こんなに小さなことなのに、なぜか、私は過剰に反応してしまったのです。

 さて、土曜日の授業参観の日。理科の教室で、息子は張り切っていました。青や赤など食紅を入れた水に花を刺し、花が色付くかどうか実験していました。子どもたちは花の茎の断面を切り取り、顕微鏡で観察。茎の断面は白い画用紙に貼りつけ、茎のどの部分が水を吸い込んでいるのか、分かりやすく説明が書いてありました。

 先生が私のところに近寄ってきて、「お母さん、お花をありがとうございます!」とにっこり。私は「いえいえ…」と返しつつ、心の中で「何で、私はあんなに息子を叱ってしまったんだろう? こんなに息子も他の生徒も楽しそうに実験しているのに」と反省モードに。

 先生は息子のグループのところに来て、他の子どもたちを呼んで説明し始めました。子どもたちが息子のグループの実験結果について意見を言います。先生が「白い花がこんな風にカラフルになって、面白いよね。マイヤー君は次に、透明な水に漬けたら花の色がまた元に戻るか、実験しているよ」

 実験が終わりに近づき、息子が先生の所に行き、何か聞いています。先生がうなずくと息子は花を持ってきて、私に聞きました。「ママ、これ持って帰っていいみたい。どっちがいい?」

 私は迷ってアルストロメリアを選びました。息子はティッシュを水に浸し、アルストロメリアの茎に巻き、実験室の引き出しからアルミホイルを取り出し少し切り取って、ティッシュを巻いた茎にクルリと巻き付け、「はい、ママ」とくれたのでした。

 息子は私が「ママに欲しかった」という言葉を覚えていたのですね。その花を息子から受け取り、私の心はドーンと沈みました。何て私は駄目親なんだろうと。

 授業時間終了を知らせるベルが鳴ると、先生が実験で使ったものをどんどんビニール袋の中に捨て始めました。息子は慌てて、透明な水に浸したガーベラを取り、また、ティッシュに水を浸して、茎にクルリと巻き付け、アルミホイルで包んで私にくれました。

 私はこうして、美しく染まったガーベラとアルストロメリアを自宅に持ち帰ったのでした。キッチンを彩ってくれた美しい花は、私の親としての未熟さを改めて認識させてくれる一方で、私の心を癒してもくれたのでした。

 


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