2021年8月23日月曜日

9年前の自分にかけた言葉

  私の長年の課題は写真整理。「時間がない」「優先順位の高いものが他にある」などずっと自分自身に言い訳をして先延ばしにしてきましたが、そうも言っていられなくなり、数週間前にようやく着手しました。きっかけはもうすぐやってくる息子の10歳の誕生日。その日に「2分の1成人式」として、10年分の写真をまとめたアルバムをプレゼントしようと思いついたのです。

 法律が変わり2022年4月から成人年齢は18歳となりますので、正式には2分の1成人式にはなりません。が、娘が小学校4年生のときは学校のプロジェクトとして自分のこれまでを振り返る冊子づくりが行われていましたので、そのアイディアを真似しました。

 娘が小さなころはデジタルカメラで撮影した画像をプリントし、幼稚園ごろまでは一応はアルバムも作っていました。一方、息子のは全く手を付けていませんでしたので、買ってあったアルバム(200枚収納)に10年間分の写真を入れることにしたのです。手順は次の通り。

1)気まぐれにプリントしていた写真、幼稚園・小学校の行事のときに購入した写真、習い事などで撮影してもらった写真、家族での記念写真をまずはアルバムに入れる。

2)パソコン内に「誕生~1歳の誕生日」「1歳」「2歳」…「10歳」というファイルを作る。

3)外付けhddドライバーに保存してあった画像の中で良いものをそのファイルにコピーする。

4)そのファイルをDVDにコピーし、DPE店に持って行きまるごとオーダーする。

 1)2)を終え、ドライバーに保存してあったまだ小さかった娘や赤ちゃんだった息子の画像を懐かしがりながら見ていると、突然、私の自撮りの画像が出てきました。仰天しました。

 画像は頭髪に出来た大きな”ハゲ”を写したものでした。息子が1歳の誕生日を迎える直前にアメリカ・シカゴの夫の実家に行き、夫の大家族に会ったときに、大きなストレスがかかって帰国後髪が抜け始めたのです。それを写したのですね。

 10枚ほど、大きな円形脱毛をあらゆる角度から写した画像が続きました。手鏡を持っている自分の自撮りもしています。その手鏡に写った私自身は険しい表情をしていました。続いて、とても暗い表情をした私のアップの画像が1枚。次に少し微笑んでいる画像が2枚と続きます。そして一連の”脱毛記録写真”は、にっこりと笑った画像で締めくくられていました。

 私は38歳のときに一度、脱毛を経験しています。抗がん剤の副作用です。1回目の抗がん剤投与の2週間後に全部抜けました。この写真を写したときは、すべての病気が収まっていて微量の薬しか服用していませんでしたので、原因がないはずなのに髪がどんどん抜けていき不安がいっぱいだったと思います。

 結局、この後も脱毛は止まらず髪は全部抜けましたが、その写真の私はまだそれを知りません。笑っているのは、きっと”大丈夫だよ”と自分自身に言い聞かせていたのでしょう。

 不安を抱えながらも笑っている9年前の私を、まじまじと見つめました。がんを患ってから、再発、再々発、2つの自己免疫疾患の発病など、途切れない病気との闘いが終わりようやく体調と心の安定を得たと安堵していたら、再び頭髪がどんどん抜けていく恐怖と闘わなければならないのです。しばしその写真に見入り、私は写真の私に声をかけました。

「頑張ったね」

 9年前の私は、にっこり笑ってうなずいていました。

0 件のコメント: