2018年1月7日日曜日

日本人母の悩み

 年が明けました。ありがたいことに、我が家は穏やかで良いお正月を迎えることができました。しかし、今年は「おせち料理」を巡り、深く考えさせられる出来事がありました。

 大晦日と元旦に食卓に並べた「うま煮」(煮しめ)。10種類の食材を別々に下煮してから、煮含めるこの手間のかかる料理を、私は母から受け継いだおせち料理の1つとして毎年作っています。元旦には出汁を取ったお雑煮も作ります。

 が、今年のお正月は娘からはっきりと言われてしまったのです。「お正月は好きじゃない。嫌いなお料理を食べなければならないから」と。そして、夫にも言われました。「来年のお正月は、子供たちには別の料理を用意したほうが良いかもね」と。

 私は平然とした表情で子供たちに、「これがお正月に食べる日本の伝統料理なの。あなたたちは半分日本人なんだから、和食をおいしく食べられるようでなきゃ駄目」と諭します。が、心の中でうなだれました。こうなったのは、私の責任だーと。

 我が家では、クリスマスやイースター(復活祭)、サンクスギビング(感謝祭)などアメリカの行事の日は夫が、お正月や節分、子供の日など日本の行事の日は私が料理を作ります。

 私はおせち料理やちらし寿司など母が作る「ハレの日」の料理が大好きでした。が、残念なことに子供たちはアメリカの行事のときに食べる料理は好きですが、日本の行事のときの料理は好きではないのです。日本人だったら、気持ちが華やぐであろうこれらの料理を、半分は日本人の血が流れる子供たちが嫌がるなんて、寂し過ぎます。

 行事の日だけでなく、普段の料理でも、子供たちは夫が作る料理が大好き。ピザ(クラストから作ります)、スペアリブ、リゾットなどです。子供たちは私が作るマカロニチーズやラザニア、ブイヤベースなど欧米の料理も大好きですが、和食のほとんどは「美味しくない」と言い、少量だけしか食べません。喜んで食べるのは、納豆巻きとジャガイモのお味噌汁、焼き鳥・焼き魚、サツマイモの天ぷら、生姜焼き肉、かぼちゃの煮付け、きりたんぽ鍋ぐらいでしょうか? 

 なぜ、こうなったのか? 調理の仕方が悪いかも?とも考え工夫したこともありました。が、煮物やちらし寿司などは誰が作っても大差はないでしょう。ついに私は、母にこれまでも何度か指摘され、認めたくなかった理由を受け入れることにしたのです。子供たちが幼いころに食べ慣れなかったからだ、という理由を。

 そうです。私は、アメリカ人の夫への遠慮から、あまり和食を作らなかったのです。夫は納豆はもちろんのこと海藻や魚のすり身、小魚、魚卵、鰹節、こんにゃくなどの食材が嫌いです。また、しょうゆ・みりん・酒・砂糖という和食の基本の味付けの中の砂糖を好みません。日本人だったら冬に恋しいおでんは嫌いです。私が愛するさつま揚げやひじきは大嫌いです。お味噌汁も好みません。ですので、私は夫が嫌いな料理は作らず、苦手な食材は使わず、煮物など作るときは砂糖をほとんど入れません。ですので、私が食べたい料理や味ではなくなるため、段々と作らなくなったのです。

 そして、私が和食を食べたいとき(頻繁にあります)は、一人分だけ作ったり、総菜屋さんで買ってきたり、冬はコンビニエンスストアでおでんを買ったりして、昼間など家族がいないときに食べていたのです。

 それが、子供たちに影響したに違いありません。娘が和食嫌いになったことを反省した私は、息子のときは少し努力しました。その母親としての当たり前の努力が実り、息子はワカメのお味噌汁やきんぴらごぼう、肉じゃが、豚汁、ひじき入りご飯などは好んで食べるようになりました。そう、赤ちゃんのころから、食べ慣れた味だからです。

 ちなみに、2人とも納豆が好きなのは「日本の食材の代表である納豆を食べないのは許されない」という私の強い思いから、夫に「匂いが耐えられない」と文句を言われつつも子供たちに食べさせていたからに他なりません。

 さて、12月に1泊2日で母の様子を見に帰省した時、母は私の大好物のうま煮を作って待っていてくれました。

 本当に美味しかった。これぞ、母の味です。でも、将来娘や息子が独立し、久しぶりに帰省するときは絶対作らない料理でしょう。おそらく私が作る料理は、少なくとも日本人母としての矜持を保つため、コロッケなど「日本の洋食」ぐらいに落ち着くんだろうなと思っています。

 このうま煮。今年の元旦は娘に文句を言われましたが、私はあきらめるつもりはありません。今年の年末も作ります。もちろん、元旦までは夫の好みの砂糖をほとんど使わず作ったものを食卓に出し、2日に砂糖を加えて自分の好みの味(つまり母の味)にして食べるーという工夫は続けますが。

 しつこく作っているうちに、子供たちが「美味しいね」と食べてくれるようになることを願っています。

  

 

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