自分で闘病記は書きましたが、他の方の闘病記は読むと辛くなるので読まないことにしています。ですが、先日、尊敬するがんのママさんがフェイスブックで紹介していたので、図書館で借りて読んでみました。
作家・山本文緒さんの「無人島のふたりー120日以上生きなくちゃ日記」です。山本さんは2021年、膵臓がんのため58歳で亡くなりました。この本では診断1ヶ月後から、亡くなる9日前までの約4ヶ月間の日々をつづっています。
日記は山本さんの夫が東京のワンルームマンションを引き払うシーンから始まります。山本さんは軽井沢に住んでいて、仕事のときなど東京のマンションを使っていました。「できることなら自分で全部後始末したかったのだが…」と、体調が悪く、ままならない残念な気持ちを正直に書いています。
日記の中には抗がん剤治療の後に髪が抜けるシーンも描かれています。バサバサと抜けるのでいっそ、と自分で引っ張って抜くのですが、人間の髪は想像しているより多く、全部は抜けない。そうしているうちに、疲れ切ってしまう。あぁ、分かるなぁと、私の経験と重なりました。
山本さんは余命宣告を受けますが、「もう一度、自分の本が出版されるのが見たい」と力を振り絞って、短編集を作ります。一方で、軽自動車や鞄など、自分が楽しんできたものを手放していきます。でも、本来なら好きなものを買って、好きなことをして過ごしてもいいはずなのに、セールになったパジャマを買ったり、税理士に送る領収書を準備したり、ということをしてしまう自分に苦笑します。それが、読んでいる側には切ない。
そして、体力が落ちつつある中、医師に「会いたい人に会い、やり残したことをした方がいい」と助言されます。山本さんはそれに対し、「ティーバッグのお茶が普通においしければいい」とつづり、一方で、「別れの言葉って、言っても言っても言い足りない」とも書きます。
読んでいて辛くなるのですが、読後は重い感情は残りませんでした。山本さんの文章のうまさだと思います。本は「明日また書けましたら、明日」という一文で締められています。なんと、軽やかな終わり方。
