2022年3月27日日曜日

プロムのドレスは…

 「ねぇ、ママどう思う?」

 インターナショナルスクールに通う11年生(高2)の娘が、私に相談を持ち掛けてきました。娘は友人関係や進路など、悩み事や判断に迷うことがあるときに私に相談してくれます。私はそれをとても嬉しく思っています。

「何?」

「ユミちゃんが、プロムに着るドレスを貸してくれるっていうの」

「プロム? ドレスのことなんて、ママに相談してくれた?」

「ママ、相談したよ。何ヶ月も前に。12年生はロングドレスだから、11年生は膝ぐらいの長さのドレスなの」

 プロムとは、米英などの高校で学年の最後に行われるダンスパーティのことです。ガールフレンドやボーイフレンドがいる場合はカップルで、いない場合もお友達同士で参加できます。娘のインターでは11年生と12年生が一緒に参加し、主役である12年生の女子はロングドレス、11年生は膝までの長さのドレスとドレスコードが決まっているのです。

 そういえば、娘にチラリと相談されたことを思い出しました。もちろん、プロムの参加申し込みはして参加費も学校に振り込みましたが、ドレスのことまでは頭が回りませんでした。修士論文だの、仕事だの、息子の塾だの言っている間に娘のこんな重要なことをすっかり失念してしまっていたのです。

 猛反省です。で、娘の相談は、娘のお友達がプロム用に素敵なドレスを貸してくれるという提案にどう答えたら良いかということ。娘はそのドレスの写真を見せてくれました。ボルドー色のそれは上品なドレスでした。娘のお友達によると、そのドレスは丈が長いので、背が高い娘ならひざ丈になると思うからよければ貸してあげるといいます。おそらく、ドレスをまだ準備出来ていない娘を気遣ってくれたのでしょう。

 そのお友達は、とてもお金持ちの家のお嬢さんで、なんと毎日運転手さん付きで登校しています。とても性格の良い子です。お母さまとも何度か食事をご一緒しましたが、それは良い人ですので、善意で申し出てくれたのでしょう。

 ご厚意はとてもありがたい。でも、私は親として娘とプロムのドレスを選びをすることをすっかり忘れてしまったことで落ち込みました。娘は写真を見ながら、言います。「これって、素敵じゃない? ママ、見て、この鎖骨のライン。オードリー・ヘップバーンが着るドレスのようだよ」

 娘は182㌢も身長があります。それに加えて、最近、かなりボリュームのある体になっています。お友達は身長が160㌢以下でとても小柄ですので、恐らく、借りてもジッパーが閉まらないということになり、娘の気持ちが落ち込むことになる確率はとても大きい。華奢な作りをしているそのドレスの写真を見ながら、私は心配になりました。

 1月に開かれたヴァイオリンの発表会でも、銀座の「Barneys  Newyork」まで足を運びましたが、娘に合うドレスが見つからず、結局は、ファストファッションのZARAでパンツを買い、私の手持ちのブラウスで間に合わせたのです(実は、それがとても似合った)。私も3,40代のときは洋服やバッグに散財しましたので、それらが似合わなくなった今、娘が着てくれるので、とてもうれしく感じています。でも、プロムに着られるドレスの代わりになるものは、さすがに私も持ち合わせていません。

 娘が、友達から送られたドレスの写真を見ながら、ポロポロと泣き出しました。

「きっと、このドレス入らないと思う。私、なんで、こんなに図体が大きいの?182㌢なんて、どんな服も似合わない。私は半分、日本人なんだから、日本人の女の子みたいに華奢な体になりたかった」。

 娘の可愛い目から流れる涙を見ながら、私は本当に切なくなりました。ああ、なんてことでしょう。娘を抱き締めながら、私も泣きました。

「春休み中、ZARAとか銀座のBarneysに行こう!きっと素敵なドレスが見つかるよ」

 私は何という母親でしょう。修士論文を仕上げて、ほっとしている場合じゃない。娘がプロムに着ていくドレスをまだ決めていないなんて…。娘の一大事に付き添っていられず、母親として失格です。

 プロムは5月末にあります。春休み中に、娘とドレス探しをします。娘に合うドレスが見つかりますよう、神様に願うばかりです。

2022年3月26日土曜日

ジュンちゃん

  突然ですが、私は母方に24人のいとこがいます。父方にもおそらく20人以上はいるので、いつまでたっても正確な数字が覚えられません。このブログを書くにあたり、手帳に書き出した後、母に電話をして確認してみました。書き出したのは21人で、母からの修正で、正確には24人であることが判明しました。

 この中には、私が生まれる前に亡くなったいとこは含まず、私が生まれた後に亡くなったいとこ4人を含めます。一番年上のいとこは昨年77歳で天国に旅立ったミッちゃん。私は下から2番目ですので、年齢の幅が大きいのです。

 このいとこの中で、私が一番親しくしているのは北海道伊達市に住む、ジュンちゃんです。私は一人っ子ですので、5歳上のジュンちゃんを姉のように慕い、悩みがあるときはジュンちゃんに相談し、嬉しいことも報告します。3人の男の子を育て上げたジュンちゃんは、懐が深く、そしてとても優しいのです。

 12人の女性のいとこの中で”一番の美人”を競ったのは天国にいるトミちゃんと、ジュンちゃんです。この2人の結婚式の写真の美しいこと。今も私の脳裏にしっかりと焼き付いています。2人とも母方の外見の遺伝子を引き継ぎました。私の母ともよく似ています(私は父似)。

 そのジュンちゃんが今回、私が大学院の修了式の日に、美しい花を送ってくれました。「さらなる一歩を応援しています」とメッセージが添えてありました。姉のように慕うジュンちゃんに祝ってもらって、とても嬉しかった。

修了式の日に届いた、ジュンちゃんからのお花

 実は私は母に、大学院に通っていたことは話していません。ですので、修士号を取得したことも母は知りません。母は面倒見の良い、精神的に自立した女性ですが、子どもである私の頑張りを認めない人でした。どんなに頑張っても認めてもらえないので、ある時点で報告するのをやめました。「また、認めてもらえなかった」と自分が長々と落ち込んでしまうのを避けるためです。でも、母とは家族で食事をしたり、差し入れをしたり、と良好な関係です。

 母には報告できませでしたが、ジュンちゃんには報告しました。ジュンちゃんは「本当によく頑張ったね!」と手放しで喜んでくれました。大学院の修了式の11日に送ってくれたアレンジメントフラワーは、今もまだほとんど枯れずに我が家を彩ってくれています。毎日、それを眺めながら「頑張るぞ!」と前向きな気持ちになっています。

 ジュンちゃん、ありがとう!

2022年3月15日火曜日

楽しみな絵本の読み聞かせ

  今日は小4の息子の学校で、絵本の読み聞かせがありました。月に一度のこの読み聞かせは、私がとても楽しみにしている日です。朝、息子と一緒に学校に行きます。登校中の子どもたちの元気な姿を見ながら、声を聞きながら、息子と一緒に歩くー。幸せをかみしめるひとときです。 

 今年度最終日の今日、読み聞かせサークルのシフトを担当するお母さんが気を利かせて、息子のクラスに私を割り当ててくれました。

 昨日まで、息子と娘を相手に何度も練習しながら、「どの本が良い?」と意見を聞いてきました。あちこちの本屋さんに行き、じっくり選んで買った3冊のうちのどれにするかなかなか決めらませんでした。3冊ともとても良い本なのです。

 迷いに迷って、最終的には「街どろぼう」(junaida、福音館書店)と「がいこつさんがわらった」(いしだいすず、みらいパブリッシング)の2冊読むことにしました。「街どろぼう」が短めなので、時間内に読み切れると思い付いたのです。


 読み聞かせサークルのメンバーは朝、図書室に集まります。そこでベテランのお母さんに聞いてみました。

「2冊読んだことある?」

「あるよ~。でも、難しいよ。子どもたちの気持ちが、1冊目に引っ張られるの。1冊目を面白い本にして、2冊目はじんと感動する本にしたことがあるの。失敗だった。1冊目で大笑いして、気持ちが盛り上がった子どもたちが、そのノリで2冊目を聞いちゃって、、、。面白い場面でないのに笑っちゃうの。だから、2冊あって1冊が面白い本だったら、そちらを2番目に読むことを勧めるわ」

 なるほど。で、示唆に富む「街どろぼう」を最初に読むことにしました。

 息子のクラスにいくと、子どもたちが私の周りに寄ってきて、「今日、何読んでくれるの?」と聞いてきます。こういうところがまだ可愛い4年生です。すると、息子が私のところに来て、「ママ、表紙はまだ見せないほうが良いよ~」とアドバイスをくれたり、「『街どろぼう』を先に読んでね」と耳打ちしたり。何と、先ほど教えてくれたお母さんと同じ意見です。そうかぁ、息子も何となく分かっているんですね。

 さて、「街どろぼう」は大きな山のてっぺんに住む巨人が一人ぽっちで寂しくて、下の街から家や店を次々と山に運んでくるお話です。ページをめくるたびに、巨人が街の家々を山に運ぶシーンが繰り返し出てきます。そのたびに、子どもたちは「えっー!」などと声を上げるのです。私が想像していたよりもずっと、子どもたちの反応がいい。山に家や人々が増えても、巨人はさみしいまま…というシーンでは、子どもたちもしんとして聞いていました。

 「がいこつさんがわらった」はテンポの良いお話です。がいこつさんの素朴さに癒される本です。この本は逆に、笑ってくれるだろうという予想とは違って、子どもたちは終始静かに聞いていました。

 2冊を読み終わった後、子どもたちが次々と感想を言ってくれました。こういう時間も本当に楽しい。先生が「2冊のうち、皆、どちらが好きだった?」と聞くと、「街どろぼう」に手を挙げた子どもたちと「がいこつさん」に手を挙げた子どもたちが同じぐらいでした。

 最後に、「ありがとうございました!」と子どもたちが大きな声であいさつしてくれました。息子も嬉しそうに、私に小さく手を振ってくれました。新型コロナウイルスのオミクロン株が蔓延し、中止となった月もありましたが、無事今年度の活動が終わりました。来年度も楽しみです。

 

2022年3月11日金曜日

昨日、大学院を修了

  昨日、大学院の修了式がありました。

 修士課程の21人、博士課程1人に学位が授与されました。新型コロナウイルス対策のため、式は簡素に、研究生と教員のみの参加。こちらに来られなかった海外、他県の研究生はオンラインで式に参加しました。

 コロナ禍、授業はほとんどオンラインでしたので、画面で顔はいつも見ているけど、初めて実際にお会いする方がほとんど。オンラインの画面では顔しか見えませんので、皆想像とは少し違うのが面白かった。ネパール人の女性は想像していたよりずっと背が高く、フランス人の男性は顔がほっそりとしているのに、恰幅が良くてびっくり。若い日本人女性医師3人は想像よりずっと小柄で、「こんなに可愛らしいんだ」とぐっと親近感がわきました。

 21人のうち9人が医師です。頭が良く、かつ若い人たちと一緒に学び卒業できた私は結構頑張ったぞと、いつもは自分自身に辛口の点数をつけてしまう私も、昨日は少し自身を労いました。

 インド人の先生の発音が聞き取り辛くて苦労した疫学の授業。統計ソフトが動かなくて辛くて涙がこぼれた生物統計学。毎回緊張した医療政策のグループディスカッション。グループで取り組んだプレゼンテーションでは、頭の回転の速い若い研究生たちに交じってどれだけ恥ずかしい思いをしたことか。そして、ホテルにこもって仕上げた論文…。

 研究生の中では、もちろん私が一番年上です。この年での挑戦は辛いことも多かったけど、それでも自分は確実に成長したなと思えます。式の後、皆で外に出て、帽子を空高く投げたときは本当に嬉しかった。

 夫は学校まで私を送ってくれ、記念写真を学校の前で何枚も写してくれました。残念ながら、式には家族は参加できませんので、夫はそのまま帰宅。私が式を終えて帰宅すると、素敵なサプライズがありました。


 壁に「Congraturations!Mama on your MPH(ママ、公衆衛生学修士おめでとう)」のデコレーション。娘が飾ってくれたようです。夫からはシャンパンと花束のプレゼント。夫はさらに夕ご飯に手長えびのソテーと、パスタ、イタリアンいか飯、チーズケーキを作ってくれてました。

「I am proud of you (君を誇りに思う)」。夫は目に涙を浮かべて、そう言ってくれました。自信をなくし、落ち込むことも多かった私を、支え続けてくれた夫。子どもたちもいつも「ママ、頑張って!」と励ましてくれました。

 家族の支えがあったからこそ、私は頑張れました。夫と子どもたちに改めて感謝した一日でした。

 

2022年3月7日月曜日

保護者会もレベル分け

  先週、息子の塾の保護者会が開かれました。中学受験に対応する進学塾の新年度は2月にスタートしますので、「新5年生」となった息子の塾の新年度初の保護者会です。

 保護者会は3日間に分かれて開かれます。私が参加したのは初日でした。CDブロックと指定された子どもの親です。そして別の日にBブロックとAブロックです。その分け方の基準は、名前の五十音順ではありません。”子どもの成績順”なのです。

子どもの成績順で分けられた塾の保護者会案内

 我が息子がいるのはD。そう、塾の中でも最も成績の悪い子どもたちが一括りにされたブロックです。昨日、このDブロックにいる子どもたちの親と、下から2番目のCブロックにいる子どもの親たちが集まりました。

 会場は、息子の塾がある、東京の中でも”塾の激戦区”と呼ばれる駅近くではなく、その最寄り駅から4駅も離れたひっそりとした駅にありました。AブロックとBブロックの会場は塾から徒歩で行かれる場所です。子どもの成績で、これほどの差がつきます。

 駅の改札口を出て、会場に向かう道で、幾人かのそれらしいお母さんを見掛けました。足早に会場の方に向かっています。 もちろん、皆さん1人です。4年生の保護者会では、お友達のお母さんとおしゃべりをしながら歩く人もいましたが、もう、そんな光景はありません。クラス分けされた受験生の親は孤独なのです。

 でも、正直に言いましょう。その後ろ姿を見て、親近感がわきました。癒されました。「あのお母さんも不安いっぱいに違いない」と一種の連帯感を持てたからです。皆、「うちの子ども、どうやって勉強させたらいいのだろう」「この塾のままでいいのだろうか」「このままの成績だと入れる学校がない」「中学校受験をさせようとした私の判断が間違っている?」など心が揺らいでいるに違いありません。

 「今は成績が悪いけど、大丈夫。うちの子どもはこの1年でぐんと成績を上げられる」などと強気でいられる親がいるとは思えません。いるなら、そのポジティブ・シンキングの方法を習いたいほど、私は途方に暮れています。

 さて、会場に着きました。たまたま座った席の近くに何と、息子と同じ幼稚園だった男子のお母さんがいました。そのお母さんは嬉しそうに座っていた席を立ちあがり、私の横に座ってくれました。

「今日、いるとは思わなかった」

「一緒で心強いわぁ」

 そんな言葉を交わしながら、近況を報告し合いました。そのお母さんとは他のお母さんも一緒に2月にランチをしました。お姉ちゃんが立派な学校に合格し、ひと息ついたときでした。2歳年下の息子にはあまり手を掛けることが出来ずにいたと言っていました。

 私も、ダイニングテーブルで勉強する息子の横に座って付き合いました(私が見ていないとサボる)が、論文書きに集中しなければならないときは「これを勉強してね」と指示するだけでした。十分に手を掛けたとは言えません。

 塾の先生たちが科目別の対策について説明してくれました。しっかりメモしました。こんなこととてもじゃないけど、全部は出来ないなぁと思いながら聞いていました。あーあ、これから2年間長いです。息子にとっても、私にとっても。