2018年5月3日木曜日

息子の入学式 アラフィフママは何着てく?

  息子が地元の公立小学校に入学しました。式に参列する50代母の私は何を着ていこうか、ずいぶん迷いました。

  46歳で、やっとの思いで産んだ息子が小学生になるのです。やはり、ここは着物でしょう。娘と息子の七五三のお祝いのときに着た「訪問着」が2枚桐ダンスの中に入っています。いずれも母が揃えてくれたものです。

 着物を着て優雅に式に参列することを想像し、うっとりとしました。でも、慌ただしい朝に美容室に行き、髪を結ってもらい、着付けしてもらうことを考えると「やっぱり大変」とすぐ弱気に。

 で、気持ちを切り替え、新しいスーツを買うことにしました。入学式に着たいのは、淡い色合いの、華やかさのあるスーツです。折角の機会ですので、これまで着たことのない白もいいかもしれない。わくわくしながらデパートに行き、40代のときによく着たブランドのお店をのぞきました。「これはいいかも」と思ったスーツを何着か試着しました。

 が、「素敵」と思ったスーツがことごとく似合わない。まずは、ウエストがきつい。かといって、ワンサイズ大きくすると肩や腰回りにゆとりがあり過ぎ、すっきりとした装いにならない。いつものサイズのスカートを息を止めてお腹を引っ込めてはき、ジャケットを羽織って鏡に映った私は、どこかちぐはぐな感じです。

 40代に着たブランドが似合わないー。これまで、うっすらと気付いていたことに確信を持ちました。体重は変わらなくても、体形が変わったのでしょう。贅肉の付く場所が変わったとでもいいましょうか。顔も当然のことですが、老けています。でも、新たなブランドを開拓する気力も時間もない。最近は、ファッション誌すら読んでいません。

 気を取り直し、他の店へ。そこで見かけた白いスーツを「せっかくの機会だから」と、手に取りました。店員さんが聞きます。

「着られるご予定は?」
「入学式です」
「小学校ですか?」。店員さんは間髪を入れず、にこやかに聞きます。

 成人した子供がいてもよい私に、そんな気遣いのある言葉をかけてくれる店員さん。さすが、接客の訓練が出来ています。試着をし、鏡に映った自分を見て「うーん」と首をかしげる私に店員さんは言います。

 「とてもお似合いですよ。写真を撮りますか? 画像で見ると雰囲気が良く分かると思います」
スマホでカシャリと写真を撮ってもらい、見てみました。顔の上半分が切れて写っています。顔を全部写さないほうが良く見えると店員さんが判断したと考えるのは深読みし過ぎでしょうが、顔の下半分から写っているスーツ姿もいま一つです。

 これでは、えぃっと勢いをつけて買う気持ちになりません。褒めるのが仕事の店員さん以外の誰かが背中を押してくれたら、とその画像を娘に送りましたが、電話での娘の反応は「うーん」。替わった夫も「うーん」。

 もう一軒デパートを見ましたが、結局落胆して家に帰ることになりました。仕方なくクローゼットの奥にある、手持ちのスーツを見てみました。娘の幼稚園入園式に着た紺のスーツはカッチリし過ぎで着たくありません。昨年末買ったばかりのパンツスーツもいかにも「仕事用」という雰囲気で入学式に相応しくない気がする。

 冠婚葬祭用のスーツも変ではないけど(卒園式で同じようなスーツを着ていたママがいて、安堵した)、「何度もお葬式に着ていったスーツを、息子の入学式に着ていくのもなぁ」と気持ちが乗らない。涙が止まらなかった父の葬儀まで思い出し、気分は下がる一方。

 仕方なく、娘の小学校の入学式のときに着たスーツを手に取ります。白とグレーのツイードの生地です。入学式に相応しいと分かってはいましたが、これを着るのは最後まで抵抗がありました。なぜか。このスーツは、ちょうど息子がお腹にいたときに着たもので、ジャケットがサイズ38(9号)、スカートが1つ上のサイズ40(11号)だからです。

 「スカートは形がシンプルですので、出産後はウエストを詰められますよ」と、試着したときの店員さんの言葉が耳の中にこだまします。産後、一旦はゆるゆるになったウエストを詰めてもらおうと考えているうちに、悲しいことに丁度良くなってしまったのです。心理的に抵抗がありましたが、仕方ありません。


 母に電話をしてアドバイスを求めました。「あのスーツは素敵だよ。あんたにとても良く似合った」と言います。娘に見せると「いいんじゃない?」。夫も「いいと思うよ」と肯定的です。結局、気分は全く盛り上がらないものの、家族の意見に後押しされて、そのスーツを着ることに決めたのでした。

 さて、入学式の日。同じ幼稚園から入学したママ友達の一人は着物、他のママたちはスーツ姿でした。着物を着たママに「朝、美容室に行ったの?」と聞くと、「自分で着たの。着付け教室に通っていた」といいます。さすが、心構えが違います。スーツを着たママの一人は私と同様、上の子供のときに着たスーツだと言います。

 「ほら、私ダイエットしたでしょ。このスーツを着るためだったの」と苦笑します。7キロ減のダイエットの話は聞いていましたが、そのスーツを着る目標があったとは知りませんでした。そのママは「スカートがウエストどころか、太腿の当たりから入らなかったの」と振り返ります。

 ダイエットをして、以前着たスーツを着られるようになり晴れがましい表情で入学式に参列したママと、他に着られるものがなく妊娠中に着ていたスーツを仕方なく着た私。小学生ママの”勝敗”はここで分かれたのでした。まぁ、着物を着た30代、ダイエットをしてスーツを着た40代、あきらめた(頑張る気持ちがなかった)50代と、世代の差が「ハレの日の装い」の差となっただけかもしれませんが、、、。

 入学式には、私が試着した白いスーツを着ていた人もいました。夫が目ざとくそれを見つけ、「あれ、君が試着して写真を送ってくれたスーツじゃない?」と私の気持ちを逆なでするような言葉を発します。

 「そうだね。若くて細いママが着るとあんなに素敵なんだね」。”完敗”したアラフィフママは、力なく夫に言葉を返したのでした。

 唯一の救いは、入退場のとき、息子が私に手を振ってくれたこと。息子の元気な姿を見られれば、私の装いなんてどうでも良いのだー。ちょっぴりお兄さんに見える息子の、少し照れた笑顔を見ながら、そう自分を納得させたのでした。
 

 

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