2017年12月15日金曜日

テーンエイジャー

 トントントンー。朝、まだ暗いうちに大きな音が聞こえました。「何事? 」と思って、寝室から出てダイニングに行くと、夫が壁のあちこちに誕生日の飾りを飾っています。その日は娘の13歳の誕生日でした。

 前日は恒例の「ディズニーランド」に行き、夜遅く帰ってきましたので、夫は朝普段より早く起きて飾り付けしたたのです。さすが、娘を溺愛する夫です。私は、すっかり忘れていました。

「My little girl(僕の小さな娘)も、ティーンエイジャーか・・・」とため息をつきながら、壁や天井に釘を打ちながら、飾りをつける夫。
「私、ぼんやりとしか知らないんだけど、ティーンエイジャーって何歳から?」
「13歳からだよ。Eleven,Twelve,Thirteen・・・だろ。だからティーエイジャー」
「なるほど」

 1年ほど前までは一緒にお風呂の入っていたのに、最近は、バスルームのドアをノックして、「ダディもシャワーに入らなければならないんだ。早く出てくれる?」と気を遣っています。ティーンエイジャーってそんな年齢なんですね。

 いつものようにお弁当を作って、送り出しました。いつものように夫と手をつないで歩く後ろ姿を見送ります。角を曲がって、こちらを振り向いた娘。前日と同様ピョンピョン飛び跳ねて、「行ってきまーす!ママ、大好きだよ」と大きな声で言い、手を大きく振ってくれました。そして、手をひらひらと動かしながら、大げさに、舞台から消えるように私の視界から消えていきました。目頭が熱くなりました。「明日も明後日も、”ピョンピョン”をしてくれますように」と願いました。

 今年に入り、背がぐんと伸びて、反抗期特有の生意気な言動が時折見られるようになりました。娘の子供らしい表情やしぐさや言葉が一つ一つ消えていってしまうことを、夫も私もとても残念に思っています。だからこそ、これまで同様子供らしい態度を見せてくれると、ほっとするのです。

 前日のディズニーランドでは、最後に娘と一緒にダンボの乗り物に乗りました。ダンボをかたどったシートに乗り、空を舞っているようにのんびりと、ぐるぐる回る乗り物です。上から見下ろした夜のディズニーランドは夢の国のようにきれいでした。娘の12歳最後の日に、”空”から一緒に見たその景色を目に焼き付けました。

 帰りの車の中で、娘が残念そうに言いました。
「ディズニーランドって、その中にいるときは夢のようにきれいですべてが完璧なんだけど、駐車場を出ると現実が戻ってくるんだよね」
「現実って?」
「信号があちこちにあって車だらけの街とか、宿題やテストがいっぱいある学校に行かなければならないこととか」
「あらっ、学校楽しいんじゃなかったの?」
「楽しいけど、ディズニーランドほどは楽しくないじゃん」

 誕生日当日の朝、夫が朝早く起きて飾り付けをしていたのは、「夢の続きをもう1日娘のために」という父親の思いからだったのかもしれないな、とふと思ったのでした。




 

0 件のコメント: