2024年6月27日木曜日

君は自信がないんだね

  昨日、2年ぶりにかつての記者仲間と食事をしました。彼は大手新聞社の編集長をしています。若き日の私をよく知っている人です。

 最初の話題は子育ての話。彼には2人の娘さんがおり、一人は大学院生、もう一人は大学生です。一筋縄ではいかなかった子育てについて、笑いを交えながら話してくれました。

 何かが引き金となり、引きこもってしまう子ども。私の周りでも、同様の悩みを持つ・持っていたママ友は少なくありません。どの親も一生懸命子育てをしていますが、解決策を見つけるのはとても難しい。私の場合、今のところそのような悩みはありませんが、日本の中でのハーフの子の子育てという別の難しさがあります。彼の話を聞きながら、どこの家庭でも、子育ては本当に紆余曲折があるなぁと思いました。

 さて、話題は移り、私の大学院生活についての話になりました。私の話にじっくりと耳を傾けた彼は、私にこう言いました。

「君は、自分に自信がないんだね。だから、学位を取りに行くんだと思う。君は取材して記事を書く人であって、研究者ではないと思うよ。君が書くべきなのは、一般の人々に届ける文章であって、専門家の中で評価を受けるための論文ではないと思う」

「うん、自信なんて持ったことがない。いつも、自信がないの」

「そうだと思ったよ。昔から君はそうだった。もっと、自信を持てばいいのに。自分に」

「そうだよね。私、間違った方向に行っているかなぁ。もう還暦なのに、笑っちゃうよね」

「間違っているかどうかということではないよ。君には、そこに行く理由があるはずだから。でも、書き続けたほうがいい。そのほうが君に合っているよ。研究よりはずっと」

 大学院で、私はいつも疎外感を抱きながら研究に取り組んでいます。そんな中、昔の私を知る彼の叱咤激励は、心に響きました。先日、札幌で参加した元の会社の同期会で感じた、居心地の良さと同じ気持ちです。仲間として受け入れられている、尊重されているという安心感なのだと思います。会社を離れて20年も経つのに、久しぶりに会っても、こういう気持ちになれるなんて、有難い。

 私も、私と一緒にいることで友だちの心が穏やかになったり、気持ちが晴れたり、受け入れられていると感じてくれる、そんな人間になりたいなと思った日でした。

 

 

 

 

2024年6月21日金曜日

雲になりたい

 娘と二階のデッキでご飯を食べていたとき、空がとても綺麗だったので、二人で空を見上げました。娘がつぶやきました。

「私、死んだら雲になりたい。

 ゆっくり、のんびりと動いていて、形にとらわれなくて、誰の手にも届かなくて。

 世界を旅できるし、綺麗な街並みや人の動きを上から眺められて楽しいし。

 私の魂は、雲のあるところにいるべきだと思うの」

 娘が小さいころ、寝かし付けるときに、よく雲の上に行くお話をしました。私が車になって、娘の小さな体を抱いて、「ぶーん、ぶーん」と空に向かって運転するのです。雲の上につくと、ふわふわな地面の上に小さなおうちがあります。表札は「アンディ」。娘の双子の弟です。

「 覚えている?」

「もちろん、覚えているよ。真っ赤な車だったよね」と娘。

 娘はすくすくと育ち、海外の大学で学ぶほどに成長しました。娘の双子の弟は、今も小さな骨壺の中に入って、私のベッドの横にいます。魂は、娘が思い描くように、雲の上をのんびりとしながら、私たちを見守ってくれているのでしょうか。

2024年6月20日木曜日

娘の優しさ

  カナダの大学で学ぶ、娘の親友レイちゃんが2泊3日で我が家に遊びに来ました。レイちゃんと会うことを何よりも楽しみにしていた娘。高校時代と変わらず、おしゃべりに花を咲かせる二人を見て、私も胸を撫でおろしました。

 実は娘は、レイちゃんと連絡が取れず心配な時を過ごしていました。ラインが既読にならないーと娘から相談を受けたのは、5月。1カ月以上も既読にならないというのです。娘は既読にならないラインのチャットのスペースに、連日、文章を書き続けていました。

「ラインを見ない理由があるんだよ。しつこいと思われるから、書くのを少しやめてみたらどう?」

 私は、レイちゃんがカナダの友人たちと親しくなって、娘のことを忘れがちになっているのではと心配しました。

「でも、既読にならないのはおかしい。何かあったんじゃないか、と思うの。それに、私は返事ちょうだいとか、何で読んでくれないの、とかは書いていないよ。日々こんなことがあったんだよという報告なの」

「分かるけど、ラインが沢山溜まるって、レイちゃんには負担かもよ」

「ママ、レイのママに連絡してくれる?」

 私は、娘が傷つくのではと心配しました。親として出来ることは、しつこくラインにメッセージを書くことでさらに嫌われるという状況を避けさせるということだけでした。そして、大学生の親が友人関係に口出しするのは、あまり良くないとは分かっていましたが、安否確認ならしても良いと考え、レイちゃんのママにラインをしました。娘がレイちゃんと連絡が取れないので、何かあったのではと心配している、と。

 早速、レイちゃんのママから返信が来ました。

「ごめんなさい。レイはちょっと精神的に落ち込んでいて、人と連絡を取っていないの。これから、連絡してみるね」

 そうしたら、翌日にレイちゃんから娘に連絡があったのです。娘によると、レイちゃんは友人関係のトラブルに巻き込まれ、憔悴しきっていたとのこと。誰とも連絡を取りたくなく、籠っていたというのです。娘はレイちゃんの話を聞き、私にこう言いました。

「レイが一番大変なときに、側にいられなくて申し訳なかったと思う。レイの側にいたら、話を聞いたり、慰めたりできたのに」

 レイちゃんが1カ月以上も娘とのラインを見なかったことを残念に思うことも文句を言うこともなく、ただただ、レイちゃんのことを心配した娘。私は娘の優しさに胸を打たれました。親バカかもしれませんが、レイちゃんは娘のような愛情の深い、優しい子とお友達で幸せだなぁと思いました。もちろん、レイちゃんもとても良い子ですので、レイちゃんというお友達がいて娘は幸せだといつも思っていて、私も夫もレイちゃんを大事にしていますが、同じぐらい、レイちゃんは娘という友達がいて幸せだと思うのです。

 夫ともいつも、私たちは娘のような良い子の親になれて幸せだねーと言い合っています。娘はとても愛情の深い、優しい子です。将来、娘のこの愛情の深さを愛おしく思って大事にしてくれる人に出会えますようにと願わずにはいられません。

レイちゃんがいると食卓も賑やかになります


2024年6月15日土曜日

娘とご飯

 娘が帰国して、家の中が明るくなりました。やっぱり娘がいる暮らしはいいなぁと思います。一番楽しみなのは一緒にご飯を食べること。今週の平日は1日だけ在宅で作業をして、娘と一緒に朝と昼ご飯を階の小さなデッキで、食べました。おしゃべりが弾みました。

 

朝が気持ち良い、2階のデッキ

昼は娘のリクエストでお蕎麦


2024年6月9日日曜日

娘が帰ってきた

  昨夜、娘がオーストラリアから帰ってきました。9時過ぎに娘がゲートから出てきて、夫、息子、そして私の順にギュッとハグ。息子はそれは嬉しそうで、ニコニコ顔の娘にしがみつきます。「背高くなったねぇ」(確かに娘がいない間に、息子の身長は伸びました)と言いつつ、「でも、まだおんぶ出来るよ」と身長165㌢の息子をおんぶします。

 身長193㌢の夫と並んで歩く娘の後姿を改めて見ました。あまり夫と差はなく、もしかしたら、183㌢からさらに伸びているかもしれません。オーストラリアで伸び伸びと過ごしているからでしょうか。いずれにせよ、元気で戻ってくれてひと安心。

 帰国してまず、娘が食べたがったのは「うどん」でした。自宅に戻り、うどんを準備しました。ダディが作った「つくね」を添えて、遅めの夕食です。「うどん、食べたかったんだぁ。あぁ、美味しい!」と娘。娘がいると家の中はぐんと華やぎます。そして、夕食の後は20分ほどヴァイオリンを弾いてくれました。

 夜は娘のリクエストで、ダブルベッドに娘と息子、私の3人で寝ました。3人で最後に一緒に寝たのは、娘がオーストラリアに旅立つ前の、半年前です。娘は背が高いので、ハグするときは私に覆いかぶさるようになるのですが、ベッドでは、いつも私の枕より下のほうに自分の枕を置きます。そこに頭を載せると、そのときだけ、娘は私より小さくなります。私を少し見上げる娘の顔や髪をなでながら、19歳といえども、まだ子どもなんだなぁ。娘もいつまでも小さな子どもでいたいんだなぁと思いました。

 娘の絵の才能と将来を考え、私と夫が勧めて、娘は海外の大学に行っています。でも、娘はいつも家族を恋しがります。「ママとハグしたーい!」と何度言われたでしょうか。そのたびに切なくなるのですが、娘はこれから長い人生があります。やはり、しっかりとした教育を受けることで、娘の人生の見通しが明るくなると私たちは考えているのです。

 娘は冬休み(オーストラリアは季節が反対)が終わる7月末までこちらにいます。この1カ月半の娘との時間を大切にしたいです。

 

我が家の紫陽花が満開




 

2024年6月8日土曜日

かけはぎ

 先日、洋服ダンスの中に仕舞っていた父の形見のセーターに1センチほどの穴を見つけました。父が着ていたものを持ち帰りましたので、クリーニングには出さずにいました。ですので、食べ物のシミなどから、虫に食べられたのかもしれません。

 大切な思い出なので、「かけはぎ」をしてもらうことにしました。近所のお直しの店に持っていくと、お見積りは約8千円。私は以前、ジャケットをかけはぎに出したことがあり、値段に見合う仕上がりに感動したので、今回も迷わず出すことにしました。

 一昨日、取りに行きました。どこに穴が開いていたのか分からないほど、綺麗に仕上がっていました。職人さんの仕事は本当に素晴らしいと改めて感動しました。


  虫に食べられないように、ジッパーのついたプラスチック製の袋に防虫剤を入れて仕舞いました。来年の春は父の13回忌です。これまで仕舞っていましたが、この冬から着ようかなと思っています。

 

2024年6月6日木曜日

娘@メルボルンからの報告 ママに似てきた

「ママ、今朝、私、何作ったと思う?」。

 娘から弾んだ声でフェイスタイムの連絡がありました。朝早く起きて、料理をしたというのです。

「ほら、卵10個余っているから、どうしよう?と話していたでしょ。で、今朝、早起きしたから、この卵使って、何か作ろうかなと考えて……」

「そうだよね、ゆで卵は好きじゃないし、カツ丼の上にかけるのも、カツを揚げるという手間がいるしって話していたよね」

「それでね、ママがよく作ってくれたキッシュを作ろうと思い付いたの。冷蔵庫の中に残っていた、リコッタチーズとベーコンとジャガイモを全部入れたの。そしてね、なんと、トルティーヤが2枚余っていることを思い出して、下に敷いたの。オーブンで焼いたら、めちゃくちゃ美味しそうなの」

 娘は今週の土曜日に冬休み(オーストラリアは日本と季節が逆なので今は冬)で帰国するので、冷蔵庫の中の食材を食べ切るようにしていたのです。

 見せてくれたキッシュは本当に美味しそうでした。



「私、ママに似てきたよ。冷蔵庫の残り物を使って、ご馳走作るの」

「あらっ、褒めてもらって嬉しい」

 娘はキッシュを一切れ切り分け、皿に盛り付けました。カフェオレと一緒にお洒落な朝ごはんです。ひと口食べると「ママ、めっちゃ美味しいよ!」とニコニコ顔です。こうして、一人暮らしでも料理をして、きちんと食事をする娘。本当に良く育ってくれたなぁと嬉しく思っています。