2016年4月3日日曜日

Japanese Culture Day ②

   娘の通うインターナショナルスクールで開かれた「Japanese Culture Day」で、ヒヤリとする"事件"がありました。息子のことをすっかり忘れて、別の場所に移動してしまったのです。最近、物忘れが多くなったとはいえ、息子の存在を忘れてはいけない、と気を引き締めました。

   息子はいま、最も目が離せない4歳。ですので、娘の学校でイベントがあるときは幼稚園の保育時間内に行くか、夫が行くかのいずれかで調整するようにしています。が、この日は、幼稚園が春休みに入った日で、かつ、私が「デコ巻き」作りの”講師役”になっていましたので、どうしても息子を連れていかなければなりませんでした。

 「デコ巻き」作りの時間は、他のママに教室の外で見守ってもらい、無事乗り切りました。親が持ち寄った料理を子供たちが食べる「ポットラックランチ」では、息子も機嫌よくお相伴にあずかりました。子供たちが一巡した後は、私も他のママたちと一緒に、美味しい料理に舌鼓を打ちました。私が早起きして作ったコロッケも早々に”売り切れ”、また、「デコ巻き」作りも無事終了し、私は安堵感に満たされました。

   さて、ランチの後は、講堂での「和太鼓」鑑賞です。子供たちが講堂に向かった後の教室内を、他のママたちと談笑しながら後片付け。すっかりきれいになりました。
 「和太鼓、間に合うわよ。急ぎましょう!」。他のママ2人と急いで教室を出て、別の棟にある講堂まで走りました。講堂の重いドアを開けると、演奏が始まっていました。ステージでは法被を着てねじり鉢巻きをした若者が威勢よくバチを振り上げ、太鼓をリズミカルにたたいています。

 「席、空いているわよ」と前方の席まで腰をかがめて走り寄り、3人並んで座りました。
 「やっぱり、和太鼓は迫力あるわねぇ」と、ステージの若者の力強いバチさばきに見入り、講堂中に響き渡るダイナミックな音に聞き惚れること15分。
 「あれっ?」と感じた違和感。「息子が、いない?」

 私は我に返りました。慌てました。記憶をたどると教室を出たときから、息子を忘れていたようです。隣のママに耳打ちしました。
 「息子を忘れちゃったわ」
 隣のママは今にも吹き出しそうな顔をして、その横のママに耳打ちします。一人っ子を育てる二つ隣のママの顔は引きつっています。「えっ? どこに?」
 「探しに行くわ」と私。隣に座るママが笑いをかみ殺しています。そして、私に耳打ちしました。
「忙しいと、やっちゃうのよねぇ。私はデパートに息子を忘れたわ」。その人は男子3人を育てるママ。太っ腹な反応で、私の心に広がりつつある罪悪感を和らげてくれました。

 さて、慌てて講堂を出て隣の棟まで走り出すと、その棟の入り口から不安そうな表情をした息子が、事務の女性に手を引かれて出てきました。私は息子に駆け寄り、抱き締めました。私は焦った表情をしていたと思います。その女性はにっこりと笑って私に言いました。
 「良かったわね。講堂で和太鼓やっているわよ。見に行ったら?」

 軽口をたたくのが好きな私も、さすがに「今、見ていました」とは言えませんでした。

 息子の手をしっかりとつないで講堂に向かいながら、息子に謝りました。もちろん、理由は説明せずにシンプルに・・・。
「ごめんね」
「いいよ。でも、ママ、ちゃんと僕のこと見ていたほうが良いよ」。泣くこともせず、親を責めることもせず、4歳にしてはとても落ち着いた反応でした。

 「どうして、あの女の人のところに行ったの?」
 「ママがいないから探していたら、掃除をしているおじさんが『ママがいないの?』って話しかけてくれたの。そして、あの先生のところに連れていってくれたの」
 「そう。で、あの先生には何か話したの?」
 「うん。 『My name is・・・ . My sister's teacher is Mr.・・・』って言った」

 親が抜けていると、子供は必然的にしっかりとするようです。自分の名前と、姉の担任の先生の名前という、手掛かりになる情報をきちんと伝えていました。

 さて、「Japanese Culture Day」のプログラムが全部終了し、私は娘と息子と一緒に帰路につきました。浴衣を着た娘に、教室を出る前に脱ぐように指示しましたが言うことを聞かないため、コートの下から浴衣が見える不思議な恰好で、電車に乗り込みました。

 私はくたくたに疲れていました。朝から働きっぱなしです。息子を忘れるというとんでもない”失態”をやらかして、反省もしていました。
 
 しかし、横に座る娘と息子がふざけ始めましたので、私は「電車の中では静かにしなさい!」と横を見て、叱りました。すると、なんと、娘がコートを脱いで、浴衣姿になっているではありませんか?
 「何で、コート脱ぐの? 恥ずかしいじゃない。だから、浴衣は脱ぎなさいって言ったでしょ?」
 「いいじゃん。別に」
 私は、その言葉にどっと疲れが増して、ただただ、自宅のある駅に着くのを待ちました。

 すると、私にとどめを差すような言葉が、私たちの向かいに立つ中年の女性から発せられたのです。
 「お嬢さん、浴衣の合わせが反対ですよ」

 「だから、何なの? 娘の浴衣の合わせなんて、どうでもいいのよぉ!」と私は心の中で叫びましたが、恐縮した表情で「娘はインターナショナルスクールに通っているもので・・・」と、分けの分からぬ言い訳をして、そのまま黙り込みました。そして、駅に着くと、子供たちを急かして、電車を降りました。

 何とも、ドタバタの「Japanese Culture Day」でした。

              

                   娘の教室で行われた、ポットラックランチ。
                   バイキング形式で、親が持ち寄った料理を食べました。
 
 

 

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