2019年1月8日火曜日

お正月に映画を観て、考えたこと

「ママ、一緒に映画を観よう」
元旦、娘がそう声を掛けてくれました。大みそかに息子にせがまれて娘と3人でレンタルショップTSUTAYAに行き、借りた5本のうちの1本です。娘によると、「トム伯父さん(夫の弟)からもらって、2度読み返した本が映画になったんだよ。とっても良いお話なの」。中2の娘が原作を2度読み返したというのです。観ないわけにはいきません。

娘は夫にも呼び掛けましたが、その話の概要を知っている夫は「お正月から悲しい映画は観たくない」と言います。小1の息子が理解できる内容ではなさそうなので、娘と2人で観ることにしました。

映画のタイトルは「ワンダー 君は太陽」。2017年のアメリカ映画で、原作は2012年に発売された「WONDER」です。先天的な病気で顔が変形している男の子オーガスト(オギー)の物語です。

オギーはずっとお母さんと一緒に家で勉強をしていましたが、中学校に入学するのを機にお母さんの強い勧めで学校に通い始めます。先生たちは快くオギーを受け入れましたが、クラスメートは違います。興味津々にオギーを見たり、「どうして、そんな顔になったの?」と直接聞いてくる子もいます。

家族に愛されて育ったオギーは、いじめに遭い塞ぎ込むこともありますが、逆境にもめげず、少しずつ友だちを作り、学校生活に適応していきます。映画はオギーの立場から語られるだけでなく、オギーの友達、オギーのお姉さん、お姉さんの親友の女の子の視点でも語られます。皆、オギーの大変さは十分にわかっていて、オギーを精一杯支えています。でも、それぞれに悩みや葛藤を抱えながら生きています。

映画を観ている最中、娘がこんなことを言いました。
「オギーはママみたいなの。ママは若くして病気になってしまって、ずっと体調が悪かったでしょ。普通だったら綺麗で元気に過ごせる30代40代を、ずっと具合が悪くて、治療の副作用で外見も変わって残念だったって言っていたでしょ。確かにママは大変だったけど、皆、いろいろとあるんだよ、きっと。綺麗で素敵で幸せそうな●●ちゃんのママだって、●●君のママだって」

娘は私が以前、ぼそっと娘にこぼしたことをしっかりと覚えていたのです。困難が降りかかったとき、前向きに明るく生き続けることは簡単ではない。でも、大変なのは自分だけではないという視点を持ち続けることの大切さを、映画を通して娘が教えてくれました。

さて、2日に観たのは「アリスのままで」です。若年性アルツハイマーを患った50歳の女性の物語です。これは息子がDVDを借りたときに一緒に3回借りて、結局は時間がなく観なかった映画です。「今度こそは観るぞ」と気合を入れて再び借りました。夫を誘いましたが、「気持ちが塞ぐので、観たくない」とのこと。一人で観ることにしました。

大学で言語学を教える知的なアリスは突然記憶が抜け落ちたり、自分のいる場所がわからなくなったりし、病院に行って検査をして若年性アルツハイマーの診断を受けます。症状はどんどんと進み、アリスは仕事も、そして自分自身も失っていきます。

映画では、アリスの病気の進行と家族の葛藤を淡々と映し出していきます。「ワンダー」のようなハッピーエンドではなく、心に切なさが残る映画でした。そして、「ワンダー」同様、本人の立場だったら、本人の家族の立場だったら、友人の立場だったら自分はどうするかーと深く考えさせられる映画でした。

印象的だったのは、診断を受けた後アリスが涙ながらに夫に訴えるシーンです。
「がんだったら、良かった。がんだったら、恥ずかしくない。ピンクのリボンをつけて(乳がんの知識を広める啓発運動のシンボル)、街頭に立って活動もできる!」

アリスの言うことは当たっていると思いました。死が近付いてくる恐怖より、記憶がなくなっていく恐怖のほうがずっと恐ろしい。この恐ろしさは、当人でしか分からないものでしょう。そしてその恐怖を乗り越えていく方法も現実を受け止める心構えも、他人が助言できるものではなく、当人が病気と向き合い試行錯誤を繰り返していく中で見付けていくものなのでしょう。

期せずして、お正月に観た2本の映画で自分自身の境遇を客観的に捉えることが出来ました。今年は、この視点を忘れずに暮らそうと決意したのでした。
 

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