2017年11月6日月曜日

インターの運動会で

 週末、インターナショナルスクールに通う7年生(12歳)の娘の運動会を観戦しました。
      
娘の学校は幼稚園から高校までの一貫校ですので、運動会は午前中が幼稚園・小学生(1~5年生)の部、午後は中学生(6~8年生)・高校生(9~12年生)の部と分かれて行なわれます。ユニークな点は、親がお弁当を持参するのではなく、PTAが販売する食べ物や飲み物を買えるところです。その「ベイク・セール(Bake Sale)」では母親たちが持ち寄ったお菓子やケーキ、PTAで準備したホットドッグやスナック、飲み物を販売します。売り上げを学校に寄付し、備品購入などに使ってもらうのが狙いです。私も前日焼いたバナナケーキとパンプキンパイを持参し、午前中販売を手伝いました。

 売る側に立つと、気になるのが自分のケーキの売れ行きです。ホットドッグや飲み物は順調に売れていき、他のママたちが作ってきたカップケーキなども次々に売れます。が、私が作ったケーキはなかなか売れません。大きく切り分け、綺麗にラッピングしたのにもかかわらず、です。

 じりじりしながら待ち、あるママがバナナケーキを手に取ってくれたときは、心底ほっとしました。10月31日のハロウィーンに食べた人が多かったからでしょうか。パンプキンパイの売れ行きが悪かったのですが、一緒に売っていたママが「このママの手作りよ」と宣伝してくれ、何とか売れました。そして、それぞれ1個ずつ残ったときに”救世主”が現れました。午後1時の中学生の部のスタートに合わせて来た夫と息子です。

「どう?売れている?」
「何とか」
「じゃあ、このバナナケーキとパンプキンパイをもらうよ」
と残りのケーキを買ってくれたのでした。

 さて、お手伝いも終わり、運動会観戦です。グラウンドでは6、7、8年生の中学生が競います。小学生のときは、何回でも走れる「徒競走」や四方に引っ張る「綱引き」など、競技のユニークさに驚いたものですが、昨年中学生になってからは各種目がきちんと競争になっていました。
 
 教室も小学生のときはカラフルなカーペットやにぎやかな展示物など遊び心たっぷりだったのですが、中学生になると机と黒板のみで、「勉強に集中せよ」という雰囲気が漂っていて感心したものです。運動会も小学生は楽しむもの、中学生は競うもの、となっているのですね。うまく考えられています。

 父母席に行くと、顔見知りの面々がいました。でも、昨年とは違い、人数が少ない。あれほど子供を可愛がっていたあのパパも、あのママもいない。その理由は次第に明らかになっていきます。

 娘のお友達のお父さんは今年一眼レフカメラを買ったと言い、早速自分の娘の写真を写しに行きました。が、「駄目だと言われた」と苦笑しながら、帰ってきました。一眼レフで写したいのは、風景でもない、街並みでもない、一人娘に決まっています。でも、残念なことに、娘は親から離れたい”お年頃”。昨年は中学生になったばかりで、小学生からの移行期で、まだまだ子供だったのでしょう。が、7年生になると自立心が芽生えてきているのに違いありません。

 10年生を筆頭に3人の子どもがいて、一番下の子が娘と同じ7年生女子のアメリカ人ママも苦笑しながら私の耳元でささやきます。
「今年はね、3人ともダディに来てほしくないって言うのよ」
 そのママの夫は、どんなイベントも参加する子煩悩なパパです。それでも、そう言われてしまうのです。そのお父さんは、堂々と楽しそうに観戦していましたので、事情は聞かされていないのでしょう。

 7年生の一人娘のママは、「娘に来ないで!って言い渡されたから、パパは一人で遠出しているわ」とあっけらかんと話します。そのお父さんは娘が小学生のときは、父母参加のリレーを走るほど、楽しんでいたのです。

 ベイク・セールで一緒に販売していた高校生のママは「絶対に観に来ないで!って言われたから、行けないの。本当は観たいんだけど。だから、こうやってベイク・セールを手伝っているの。雰囲気を味わえるでしょ」と寂しそうでした。高校生になると父親だけでなく母親も拒否されてしまう家庭もあるようです。

 満面の笑顔でまとわりついてくれた子供のイメージを持ち続ける親と、親離れしつつある子供たち。そのギャップに気付かされるのがこの中学生という年齢なのですね。

 いろいろな話を聞かされた後、一眼レフを首から下げて、私も娘の近くに行きました。今年は昨年まで付けていた長い望遠レンズはやめて、普通のレンズを付けました。大げさに見える行為は自粛しました。友人たちと談笑する娘にレンズを向けると、娘は私に気付き、飛びっきりの笑顔を見せてくれました。それを何枚も写真に収めながら、私の心の中に安堵感が広がりました。娘はまだ、”お年頃”になっていないのかもしれません。でも、来年の運動会はどうでしょうか? レンズを向けたときに、あの笑顔を見せてくれるでしょうか?

 運動会の最後の競技は、子供たちと親が競う、綱引きでした。初めは子供たちの方が強く、親は劣勢でしたが、次第に掛け声を出し始め綱を引っ張るタイミングを合わせ出し、結局は親チームが勝ちました。さわやかな汗をかいた親たちは、「持久力では子供たちに負けない」と口々に言いながら、笑顔でグラウンドを後にしたのでした。

 来年は中学生最後の運動会です。今年来ていた親たちの何人は、”脱落”してしまうかもしれません。中学生の運動会は、親にとってほろ苦い気分を味わうイベントなのだー。そんなことに気付いた一日でした。

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