2016年10月30日日曜日

親子ドッジボール

 娘の通うインターナショナルスクールで授業参観があり、体育の授業で親子ドッジボールに参加しました。

 授業参観が行われたのは、日本語、算数、体育、宗教(娘の学校はカトリックです)の4教科。日本語、算数、宗教は日本の公立校と同様、教室の後ろで見るだけでした。少し違ったのが、体育の授業。子供たちのバスケットボールの授業が終わった後、先生が「お母さん、お父さん、子供たちと一緒にドッヂボールをしませんか?」と呼び掛けたのです。

 体育館の2階のベンチに座って、子供たちのバスケットボールを観ていた親たちは互いに顔を見合わせました。「どうします?」「私、運動神経鈍いのよ・・・」という声が聞こえます。が、46歳の夫も51歳の私も立ち上がりました。こんな経験は二度とないかもしれないのです。参加しない手はありません。ためらうお母さんたちにも、「行きましょうよ」と声掛けし、コート内に。

 親子ドッジボールは、楽しかった。普段、スポーツをしている姿など見たこともない夫の活躍も、予想外の楽しい発見でした。誰も信じてくれませんが、私はバスケットボールやハンドボールは得意中の得意。が、コート内を軽やかに動き回った・・・とはならずに、あっという間に子供にボールを当てられ、コートの外に。夫は、コートの中心に立ち、少ない動きで、次から次へと子供たちにボールを当てていきます。私はコート外でようやくボールを拾って子供にぶつけ、コート内に。が、また、子供たちに狙われて、ボールを当てられます。こうやって、ちょろちょろと動くものの、出たり入ったりを繰り返す始末。夫は泰然と、なんと十人近くの子供に当ててしまったのです。

 楽しい時間も終わり、先生が親たちに言いました。「お父さん、お母さん、ありがとうございます。子供たちにとってとても楽しい時間となりました」

 「あっという間に子供に当てられたわ」
 「ドッジボールなんて、何十年ぶりかしら?」
 親たちの表情もみな、一様にさわやかでした。

 さて、体育の時間が終わりクラスに戻るとき、娘が私にこっそりとつぶやきました。
「男子たちがね、君のお父さん、怖いなぁって言うんだよ」
 娘は苦笑いしています。
 その言葉を聞き、40年以上前の、私の小学生時代を思い出しました。あのときもあったのです。授業参観での親子ドッジボールが。

 そのときの情景が鮮やかに蘇りました。運動神経抜群の私の母が、コート内をすばしっこく動き回り、子供たちに次々とボールを当てます。他のお母さんはおろおろとしているのに、私の母は生き生きとして、コート内を走り回っています。
 授業が終わり、担任の先生に、「君のお母さんは運動神経が良いね。たぶん、学生時代に何かスポーツをしていたんだね」と言われ、なぜか恥ずかしく、鮮明な記憶として私の脳裏に刻まれました。
 母と母のきょうだいは皆足が速く、「鈴木(母の旧姓)のサラブレット」と近所でも有名だったらしく、さらに、母は中学・高校とバレーボールのクラブに入っていました。ですので、授業参観で親子ドッジボールに参加することは、母にとって久しぶりの楽しい時間だったに違いありません。

 ドッジボールで親子の交流を深めるー。これが世代を超えて、国籍を超えて、行われている。このような素敵な発見が出来たことは、とても嬉しいことでした。

 後日、夫にこのときの活躍についてほめると、夫はまじめな顔をして答えました。
 「鍵は、コートの中心にいることなんだ。僕は195㎝と体が大きいから、的にするには最適だ。でも、ボールを投げるのは子供だからね。それほど遠くに的確にボールは投げられない。コートの中心にいれば、コートの外にいる自分の視野に入らない子供たちがたとえ僕を狙っても、なかなか届かないんだよ。自分の視野に入る子供たちは、狙えばすぐ当てられるしね」

 なるほど。さすが、アメリカ人。ドッジボールのやり方までも合理的で、戦略的です。私のように、ただただボールから逃げているだけでは、すぐ、当てられてしまうのだなあ、と妙に納得。
 「次の親子ドッジボールは、戦略的に行こう」
 息子が小学生になったときに、”リベンジ”の機会が訪れますように、と願ったのでした。

 

 

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