2018年7月4日水曜日

息子の宿題

「ママ、ぎゅっして」
金曜日の夕方、息子が珍しく私にハグを求めてきました。
「あらっ、嬉しい」
私はこのときとばかりに息子をぎゅっと抱き締めます。

「どうしたの?珍しいね。いつもはママからぎゅっしてってお願いするのに」
「今日の宿題なの」
「宿題?」
「そう。今日は国語や算数の宿題がない代わりに、先生が『お母さんやお父さんに一杯ぎゅっしてもらいなさいって』」

何て粋なことをする先生でしょう。私の心はほんわかと温まりました。地元の公立小学校に通う息子の担任の先生は、幼稚園年中と小学校2年の2人の子供がいるお母さんです。時には短パン姿で子供たちを教えたり、でも、ちゃんとネイルをしていたり、と今どきの若い女性。若い先生は発想も柔軟で、そんな素敵な宿題まで出してくれるんですね。

息子に連絡帳を見せてもらいました。子供たちは毎日、翌日の時間割や持ち物、宿題の範囲をこのノートに書いてくるのです。ページをめくるとありました。宿題の「し」の字の下に、「だっこしてもらう」と。そうか、先生は「だっこしてもらってね」って言ったんだな。我が家ではそれを「ぎゅっ」と言うので、「ママ、ぎゅっして」になったんだなと、想像しました。

さて、月曜日の朝。宿題はしたものの、ランドセルにその日に使う教科書やノートが入れていなかったため、支度に時間がかかりました。
私は、「歯を磨きなさい」「だから、前の日の夜にしなさいっていったでしょ」と、息子を急かします。
息子も慌ただしく、ランドセルを背負い、黄色い帽子を被って、靴を履いて玄関を出ていきます。

「いってきます。今日は忙しいから、ぎゅっはなしだよ」
「えっ? ママ、お支度の手伝いをしてあげたんだから、ぎゅっしていってよ」とすねる私。
おざなりなぎゅっをする息子を、しっかりと抱き締め「いってらっしゃい」と言いました。

いつものように道路に出て、見えなくなるまで息子を見送ります。走っていく息子は、いつものように全然こちらを振り返りません。
「じゃあね、ママ、いってきます~」と何度もこちらを振り返って、笑顔で大きく手を振ってくれる娘とは全然違います。
でも、私はずっと見守ります。すると、いつものように見えなくなるほど小さくなってから、息子はこちらを振り返ります。私は息子がこちらを見えるように、道路の真ん中で大きく手を振ります。

あまり視力が良くない私には、息子は小さ過ぎて、手を振ってくれたのか、そのまま前を向いてしまったのか分かりません。が、歩みを止めてこちらを一瞬でも振り返ってくれたことが、何よりもうれしい。もしかしたら、こちらを振り返っていない? いやいや、大丈夫、振り返ってくれたよ。そんなことを心の中でつぶやきます。

いずれにせよ、息子と娘のぎゅっは私の大切な朝の儀式。これがあると、今日もハッピーな一日が送れそうな気がするのです。

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