2016年6月21日火曜日

大足は誰のせい?

   インターナショナルスクールに通う娘が卒業式(6月に開催)に履く、黒い革靴を買いに行きました。半年前に購入し、数回しか履いていない、サイズ24・5センチが小さくなってしまったためです。

 新しい靴を買いに行く前に、一応は玄関でその靴を娘にもう一度履かせてみました。
「卒業式は2時間ぐらいでしょ。我慢できないの?」
「出来ない。痛過ぎ」
「これ、数回しか履いてないから、もったいないよ」
「でも、これじゃあ、歩けないよ」

 24・5センチの靴を履く私が、試しに履いてみます。ピッタリです。
「これ、小さいの?」
「うん。でも、私のせいじゃない。ダディのDNAを引き継いだからだよ」。娘はムッとした表情で答えます。

 そうです。11歳にして25センチの足は、やはり、サイズ30センチを履く父親のせいでしょう。日本の女性の中では足が大きいほうの私は、幸運なことに責任を免れ、ほっと胸をなでおろしました。

 家族4人で、デパートに行きました。まず、子供靴売り場に向かい、今の靴と同じメーカーの25センチを履いてみました。
「ぴったりだよ」と娘はうれしそうです。店内を行ったり来たりしながら、「ぜんぜん、きつくないよ」と言います。
「ぴったり」という娘の言葉に反応した私は、店員さんに聞きました。
「25・5センチはないんですか?」
「すみません。25センチまでなんです」

 落ち着かない息子の相手をしていた夫が、イライラした口調で私に言います。「また、すぐ小さくなるんだから、大きいのを買ったら?」
 「でも、これ以上大きいサイズがないのよ」と私。
娘がここでもムッとした表情で、夫に言い返します。
「足が大きいのは私のせいじゃないからね」
店員さんがそのやり取りを聞き、困った表情を浮かべています。

 すぐ小さくなる靴を買うのももったいないので、次に婦人靴売り場へ行きました。普通の売り場は24・5センチまでしか置いていないため、「大きいサイズ」のコーナーへ。そこは品数も少なく、ほとんどがヒールが高く、小学生の子供が履くようなかわいらしい形などありませんでした。結局、あと半年もすればまた小さくなるであろう、25センチの子供靴を買いました。

 

 買ったのは、つま先が丸く、足の甲をベルトで支える形です。小さな女の子がよく、お出かけ用に履いている靴です。娘はこの形の靴を幼稚園の入園式で初めて履きました。「入園祝いに」と私の両親が、子供服ブランド「MIKI HOUSE」で買ってくれました。サイズは18センチだったと記憶しています。それから、毎年、同じ靴を買い足しました。22センチになると、「MIKI HOUSE」の靴は、それ以上大きいサイズがないために、”卒業”。それから、同じ形の靴を探して、買い続けました。それらはすべて、きれいに磨いて靴箱に入れ、屋根裏部屋に仕舞ってあります。

 さて、卒業式。娘は新しい革靴を履いて、式に出席しました。壇上で、担任の先生から名前を呼ばれて、嬉しそうに卒業証書を受け取りました。そして、クラスメートたちと歌を歌い、満面に笑みを浮かべて、客席の私たちに手を振りました。

 小さいころから、ドレスを着るときは必ず娘が履いた、ベルトがついた”少女靴”。小学校の締めくくりの式に、この靴を履いて娘が出席できたことを嬉しく思うとともに、「もう少しで、この形の靴も卒業なんだな」と娘の成長をちょっぴりさみしく感じたのでした。

 
 



2016年6月13日月曜日

ザリガニ捕り

 今、息子と娘の間の”ブーム”は「ザリガニ捕り」です。息子は幼稚園から帰ると、「ザリガニ捕りの網」と虫かごを持ち、自宅から自転車で数分のところにある公園に出かけます。娘も学校帰りに合流します。

                   

 その公園には小さな池や小川があちこちにあり、ザリガニがたくさん棲んでいます。午後の早い時間には幼稚園児が、遅い時間には小学生が続々と集まります。息子は夢中になるあまりに、池に落っこちてびしょ濡れになったり、割りばしに紐と餌を付けただけの簡易な”釣り竿”でつり上げてはつかみ損ねたりしながら、コツをつかんでいったようです。

 ある日息子はいつも子供たちが集まる池ではなく、公園内に流れる小川のよどんだところを、狙いました。聞くと、おねぇねぇが「そこにいるよ」とこっそり教えてくれたようです。息子は真剣に網ですくいとります。何度かすくった後、
「ママ、ザリガニ捕れた!」と歓声を上げ、私に見せてくれました。
「どれ、見せて?」
網の中にすくった泥の中をよくよく見れば、確かにザリガニのようなものが見えます。でも、動きません。

「死んでいるよ」と私。
「違うんだ。死んだふりしているんだ」と息子。
「そうかなあ・・・?」
「触ってみる?」。

 息子は網の中に手を入れ、親指と人差し指でザリガニをつかんで、私に見せてます。確かに、指でつまむと、ザリガニは足をゴソゴソと動かします。
「ザリガニが死んだふりするなんて、誰が教えてくれたの?」
「おねぇねぇ」
”自然派”の娘は、小さいころから虫やカエルなどが大好き。それらの生態を、ちゃんと弟に伝授しているようです。

 そうこうしているうちに、学校帰りの娘から「ママ、今、駅に着いたよ」と電話がありました。この日も、「先に公園に行っているよ」と朝、伝えてありました。ほどなく、娘が到着。
「ママ、私の網は?」
「もちろん、持ってきたよ」と私はピンクの網を渡しました。

 娘と息子は、また、張り切って、小川のよどみに網を入れます。
               

 この日の収穫は2匹。虫かごに入れた2匹の上から、小川の水をたっぷり注ぎ、娘と息子は満足そうです。そして、帰宅後は玄関前にすでに並んだ3つの虫かごの横にこれを並べます。もちろん、子供のことですから、これらの世話のことはすっかり忘れます。で、結局は私が世話をすることになります。

 カブトムシ、ザリガニ、おたまじゃくし・・・。アラフィフィママは実のところ、これらがあまり得意ではありません。でも、「苦手なの」などと言ってられません。
 「大人になってから、これらともう一度触れ合うことが出来るのは、子供を持つ醍醐味だわ」
 土と淀んだ水と、ガサゴソ動く”中身”が入った虫かごを見ながら、そう自身に言い聞かせるのでした。