2015年11月28日土曜日

息子の自立

  息子は一度も、私を振り返りませんでした。前だけを見て、駆け出していきました。11月21日、アメリカに旅立つ息子と夫を、成田エクスプレスの乗車駅まで、娘と二人で送りに行ったときのことです。ダディと二人での初めての旅行。行き先はグランパとグランマがいるアメリカ。4歳の息子の心は期待で一杯だったのだと思います。後ろに残した「ママ」のことは、もうすっかり息子の心からは消えていたのでしょう。その、まだ小さな後姿を見送りながら、私は少し寂しい気持ちになりました。
 
  この8日間のアメリカ旅行を控え、息子の行動には少しずつ、自立の兆しが見えていました。まず、姉に、水色のミッキーマウス柄のスーツケースを借り、自分の洋服を詰め始めました。ジーンズではなく、履き心地の良いストレッチパンツ2枚。お気に入りのショートパンツ。ショーツを数枚。ソックスを数足。そして、大好きなスパイダーマンのTシャツ、ダディの出張土産「SINGAPORE」のロゴ入りスウェット。そして、水着。「ママ、メガネどこ?」と水中メガネについても忘れず、私に問い合わせました。

  生まれてからずっと一緒だったクマのぬいぐるみを置いていくことにも、同意しました。寝るときには必ず、左手に「ベア」をつかんで顔にすりすりし、右手の親指をしゃぶっていた息子。絶対に必要なベアだからこそ、旅の途中で失くしては大変と、愚図るのを覚悟で「ベアはお家に置いていくのよ」と言い聞かせました。そのときも、拍子抜けするほどあっさりと、「うん」とうなずいたのです。そして、出掛ける直前まで、椅子に座ってベアに頬をすりすりし、そのまま椅子に置きました。そんな息子の姿は愛おしかった。でも、ベアがいらなくなる日がこんなに早く来てしまったことに、私は少し動揺しました。もしかしたら、ママがいらなくなる日も、こうやって突然、何の前触れもなくやって来るのではないかと。

   振り返らずに行ってしまった息子を見送りながら、私は、息子の姿に、母がしてくれた思い出話の中の、私の姿を重ね合わせました。千歳空港の出発ロビー。私が向かったのは成田空港経由のアメリカ。「あんたは一度も、こっちを振り返らなかった。お母さんもおばさんも、泣きながらあんたを見送っていたのに」。念願のアメリカ留学で、私の心は希望で一杯でした。だから、見送ってくれた両親や叔母を振り返って、手を振ることすら思い付かなかった。私は、息子と同じく、前しか向いていなかったのです。あのときの母の切ない思いを、私は今回、追体験しました。きっと、これは子育て中の多くの人が経験する思いなのかもしれません。

  帰宅後の自宅は、静かでした。娘とゆっくり話をし、二人でお風呂に入り、二人で寝ました。「おねえねえ」と、息子が姉を呼ぶいつもの呼び方で声を掛けると、娘は「弟がいないときは、私の名前を呼んで!」と私に静かに訴えました。4歳の息子への思いで心は一杯になり、10歳の娘の気持ちに無頓着だったことに、気付かされました。私は「ごめんね」と謝りながら娘の名前を改めて呼び、娘をぎゅっと抱き締めました。

2015年11月24日火曜日

外に向かって

   皆様、初めまして。マイヤー睦美と申します。
   11月21日土曜日から、4歳の息子が父親と一緒にアメリカ旅行に出掛けました。やんちゃな息子がいなくなると、小5の娘との生活は本当に静かで、時間もたっぷり。なので、娘が学校に行っている間、ぽっかりと空いた時間を使って、ブログを始めることにしました。

   実は私は長い間、ブログなどネット上で自身についての情報や考えを発信することに否定的でした。がんや自己免疫疾患などを患っている期間が長く、人とつながることが億劫になっていたことや、治療による外見の変化により自信を無くし、できれば自分自身の存在を社会から消し去りたいとさえ思っていたからです。

  けれど、体調が良くなり、超高齢ではありますが、母親としての活動が普通に出来るようになってから、段々と心が外向きになってきました。そして、外を見渡すと、世の中がとても変わっていることに気が付いたのです。いえ、正確に言えば、変わっていることは知っていたけれど、それを無視して自分の殻に閉じこもっている間に、世の中は大きく変わっていた。そして、たぶん殻を破ってもう一度外に出たほうが良いのではないか、と思うようになったのです。インターネットやコンピューターに詳しくないためセキュリティ上の不安も尽きませんが、ある程度のリスクを取って、新しいことに挑戦したほうが良いのではと考えるようになったのです。

   で、2週間前にラインを始め、今日思い切ってブログを始めることにしました。ラインを始めてから、友人たちと気軽に会話でき、暮らしが楽しくなりました。ブログを始めたら、暮らしに弾みがついたり張りが出たりするのでしょうか? 楽しみです。